物語体験を再設計する~「MANGALOGUE:火の鳥」対談

公開日:2026年6月02日

  • 朴正義、石橋素

今年3月、高輪ゲートウェイシティにオープンしたミュージアム「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」。4月22日から5月16日まで開館記念特別公演として行われた「MANGALOGUE(マンガローグ):火の鳥」は、マンガそのものを映し出す巨大LED、舞台をナビゲートする「ロボットアーム」、観客と一緒に物語を旅する「MANGALOGUER(マンガローガー)」とともに、マンガの世界を体感する新しいライブパフォーマンスとして話題を集めました。今回の青山デザイン会議では、その制作過程に注目。普段はひとりで楽しむマンガを、どのようにライブ空間での体験へと落とし込んでいったのか、さらにAIやロボットなどテクノロジーを駆使したクリエイティブのこれからとは?同プロジェクトに企画段階から関わり、制作統括・クリエイティブディレクターを務めたバスキュールの朴正義さん、そして舞台の鍵となるロボットアームのテクニカルディレクションを務めたアブストラクトエンジンの石橋素さんに語っていただきました。


ただの「イマーシブ」にはしたくない

朴:「MANGALOGUE(マンガローグ):火の鳥」の企画がスタートしたのは、もう2年ほど前。高輪ゲートウェイシティにオープンするミュージアム「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」のこけら落としとして、アーティスティック・ディレクターの内田まほろさんから、手塚治虫の『火の鳥』を舞台にしたいと相談を受けたんです。一発のライブものはたくさんやったことがありましたが、何度も繰り返す舞台となると僕も初めてだったので、どういうチームで臨めば期待に応えられるのか、特に本と演出をどうするかと悩みました。脚本は、僕の初めてのテレビ特番企画『BLOODY TUBE』でご一緒した竹村武司さん、演出は米津玄師やamazarashiなどのライブを手がける鈴木思案さんに声をかけて。また、全12編ある『火の鳥』のうちで何を取り上げるかは紆余曲折がありましたが、環状線である山手線の高輪ゲートウェイ駅にできる施設ということもあって、わかりやすい円環構造にある『未来編』でいくことにしました。早速、竹村さんに脚本を書いてもらったところ、本を見た瞬間「これはいける!」と勇気をもらって。

石橋:というのは?

朴:「演者も観客も、皆がメガロポリス・ヤマトの先祖」という設定にしてくれたんです。『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』といった最近のマンガは、キャラクターに感情移入する設計がされていますよね。でも、手塚さんのマンガには、その余地が全くない。竹村さんがメタ構造をつくってくれたことで、超メタ的な話である『火の鳥』に、観客が入り込む取っかかりができた。

石橋:その頃はまだ、演者である「マンガローガー」がロボットアームと一緒にマンガを読んでいく演出はなかったんですか?

朴:ホールに導入予定の大型LEDなど最新設備を活用した「デジタルセノグラフィー」にしたいという要望はありました。ただ、日本マンガのパイオニアである手塚治虫の大傑作『火の鳥』がテーマにもかかわらず、単に壁一面に映像を映しただけで「イマーシブ」というような二番煎じをしたら、マンガの神様への冒涜だと思っていたし、そもそも個人的に好きな世界ではないので、絶対にやりたくなかった。一方で、人とロボットとの共生を描いた作品なので、デジタルセノグラフィーという意味でも、「ロボットを入れたい」というのは、ずっと言っていましたね。

石橋:最初はロボットアームで絵を描こうとしていましたよね。

朴:ただ、それも大変だと気付いて数カ月悩んでいたんです。そんなとき、演出の鈴木さんと一緒にアニメーションを担当してくれたmimoidの細金卓矢くんが、「ロボットアームに取り付けたカメラで原画を映して、その画面を観客に見せればいいんじゃないか」と言ってくれて、「これだ!」と。そこで“本家”の石橋くんに相談したんです。

石橋:15年前ぐらい前に、やくしまるえつこさんのMV『ルル』で、ロボットアームを使っていたんです。当時はプロジェクションマッピングがめちゃくちゃ流行っていて、ただ映像を投影するだけだと面白くないから、アームの先にカメラとプロジェクターを付けて、プロジェクションをしながら同時に撮影もしました。

朴:原画もすごくきれいに彩色されていたので、読ませたいコマに光を当てていけば、それだけで新しいものができる。石橋くんとは、以前からロボットアームを使いたいと言って、ロボット会社の見学を繰り返していたので、キター!と思って。

石橋:それが固まったのが、去年の11月か12月くらい。昔使っていた古いアームにカメラを付けて、テストをしましたよね。

朴:どんなスピードで動かせばいいのか、そもそも人はどうやって...

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