「モノを世界で最も速く広める」をビジョンに掲げるベクトルが、マーケティングの常識を覆す。着目したのは選挙戦で見えた「ショート動画のアルゴリズム」だ。アルゴリズムを最適化できるような仕組みを構築し、莫大な費用をかけずに情報を流通させる「ファストPR」とは何か。アルゴリズムを味方につけたベクトルの次なる勝算について、同社 代表取締役会長兼社長CEOの西江肇司氏に話を聞いた。
「リテナー・アルゴリズム」がPR会社と極めて相性が良い理由
「モノを世界で最もスピーディー、かつ効率的に広める」を掲げ、日本のPR業界を牽引してきたベクトルが今、大きなパラダイムシフトの真っただ中にいる。同社が新たに見出した鉱脈は「ショート動画のアルゴリズム」。広告業界が依然としてクリエイティブの質や細かなターゲティング設定に腐心するなか、ベクトルはあくまでもPR会社としてまったく異なるアプローチでマーケティングの常識を覆そうとしている。
そんな同社が目指すのは、AIとアルゴリズムを最適化させる仕組みを構築し、莫大な費用をかけずに情報を流通させる「ファストPR」のインフラ構築だ。
これまでSNSやショート動画事業を手掛けてきた同社であるが、代表取締役会長兼社長 CEOの西江肇司氏が、ショート動画の持つ破壊的なポテンシャルに気付いたきっかけは選挙選だった。2024年7月の東京都知事選挙や2025年7月の参議院選挙において、石丸伸二氏や石破茂氏の動画が爆発的に拡散される現象を目の当たりにした際、ある事実に気が付いたという。「一度でも彼らの動画を見ると、頼みもしないのに次々と関連動画がフィードに流れてくる」。これは従来のメディアにはない現象だった。
通常、テレビCMやネット広告は、企業側が性別や年齢などの属性を指定してターゲティングを行う。しかし、TikTokやYouTube Shortsのアルゴリズムは違う。ユーザーの視聴履歴や滞在時間に基づき、プラットフォーム側のAIが「このユーザーはこれに興味がある」と判断し、「勝手にターゲティング」してくれる。
「私たちが必死にメディアプランニングするよりも遥かに正確で速い」と話す西江氏は、この発見を「アルゴリズムの最適化」と捉えた。「ユーザーの興味関心に基づき、自動的に情報を潜在顧客に表示してくれるシステムは、PR会社が長年追い求めてきた『情報の波及』の理想形そのものでした」(西江氏)。
さらに西江氏は、このアルゴリズムの特性が、広告会社ではなくPR会社のビジネスモデルと極めて相性が良いことを見抜いた。ショート動画のアルゴリズムは、一度の視聴で終わらせず、継続的に関連コンテンツを表示させるリテンション機能を持つ。西江氏はこれを「リテナー・アルゴリズム」と呼ぶ。PR会社はクライアントと月額契約を結び、継続的に情報を発信し続けることを生業とする。つまり、「継続的にコンテンツを供給し、アルゴリズムに乗せて不特定多数の生活者へのレコメンド接触を持続的に創出する」というショート動画の勝ち筋は、PR会社の収益構造と完全に合致するのだ。
「当社はあくまでPR会社であり、マス広告領域には入らない」と西江氏は断言する。昨今、消費者は広告を無意識に避け、スキップする傾向にある。しかしPR的な文脈でつくられたショート動画はコンテンツとして認識され、スキップされずに視聴される。広告以外の領域で、広告のように嫌悪感をユーザーに抱かせずに商品をPRできるのは、文脈づくりを得意とするPR会社の特権だ。
個人インフルエンサーに依存せず自社でアカウントをブランド化
この戦略を推進するうえで、ベクトルは個人のインフルエンサーに依存しない体制を整えつつあるという。これまでショート動画マーケティングといえば、有名なインフルエンサーに商品をギフティングして紹介してもらう手法が主流だった。しかし同社は、「東京のグルメ情報」「美容・コスメ情報」といったテーマを持ったアカウントを自社でブランド化し、メディアとして運用する。
すでに同社運営の「EMME(エメ)」「MAYO /トレンド情報局」「コネクト東京グルメ」などのアカウント群は、月間視聴数10億回を記録し、既存のWebメディアや雑誌を凌駕する影響力を持ち始めている。企業から見れば、個人の炎上リスクや気まぐれに左右されず、安心してショート動画を活用できる。
■ベクトルが運用するInstagramアカウント
同社運営の「EMME」「MAYO/トレンド情報局」「コネクト東京グルメ」などのアカウント群は、月間視聴数10億回を記録している。
こうした同社の戦略の裏には、先行する中国市場からの学びがある。同社は中国のライブコマース大手「熱度(Redu)」と連携し、その凄まじい実態を目の当たりにした。中国では、ひとつの商品に対して翌日には200本もの動画が制作され、投稿される。そして、AIが瞬時に反応の良い動画を選別し、その数本を集中的に拡散させる。「数とスピード」による圧倒的な面制圧。これを日本で再現するには、1本数百万円もかけて動画をつくる従来のやり方では不可能だ。しかも今の時代、つくり込まれたCMより、一般人がただ納豆を食べているだけの動画や、スマホで撮影したままの無加工の動画のほうが、圧倒的に再生数が上回るケースが多発している。同社はこの現実に対応するべく、徹底的なコストダウンと量産体制を敷いた。撮影するのはプロのカメラマンではなく、大学生のアルバイトや一般の人々だ。彼らがスマホで撮影した「撮って出し」の素材こそ、今の視聴者が求める「リアル」だからだ。
「ショート動画を活用すべきだと理解していても、皆さんどうしても広告の考え方に縛られてしまうのです。ただ、ショート動画はそもそも広告としてつくると、うまくいかない。PRとは、文脈をつくって情報を広げる仕事ですよね。ショート動画は、そのやり方と本当によく似ている。だからベクトルとしては、PR会社として一番相性のいい形を突き詰めている、という感覚です」(西江氏)
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