生成AIの進化は、単なる業務効率化にとどまらず、表現の幅を広げ、創造のプロセスそのものを変えつつある。テクノロジーとクリエイティブの融合が加速する今、企業や個人はどのようにこの変化を捉え、活用すべきなのか。クリエイター・マーケターの仕事はどのように変わっていくのだろうか。GenerativeXの共同創業者である上田雄登氏が解説する。

GenerativeX
共同創業者/CSO
上田雄登氏
東京大学工学部卒業後、同大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻(松尾研究室)修了。修士(経営戦略学)。2016年にYCP Japanへ入社し、経営コンサル業務やAIコンサル業務に従事。2021年より松尾研究所・経営企画部門にて事業改善や中期経営計画等の策定に従事。2023年6月に生成AIを用いたDXソリューションを提供するGenerativeXを共同創業し取締役CSOに就任。国内大手企業向けの生成AIを用いた業務改革やアプリケーション開発、経営戦略の立案に注力。
①AIのインパクト
アイデアの質だけではなく効率とスケールも変わる
中国発の動画共有アプリ生成AI(Generative AI)の登場により、短時間で高品質なテキストや画像、さらには動画までつくれるようになりました。しかし実際に導入した企業の中には「数回試してみたものの、本格活用には至らなかった」という声も多く聞かれます。なぜでしょうか。多くの場合、AIを「部分的な時短実現ツール」にしか位置づけていないことが原因です。
もちろん、AIによる文章生成や画像生成は一定の効率化をもたらしますが、それだけでは不十分です。
① クリエイティブの質が飛躍的に向上するだけでなく、
② 業務自体のスピードが大幅に加速し、
③ これまでリソース不足で実施できなかった大量施策(膨大なA/Bテストや多言語展開など)を可能にする。
ここにこそAI導入の“本当のインパクト”があるのです。たとえば、以前であれば専門知識や予算が必要だった動画制作や多様なデザイン案の大量生成が、ごく限られた時間・コストで実行できるようになりつつあります。結果としてマーケティング施策自体の考え方が変わり、「少数精鋭で1本の動画をつくり込む」という従来のスタイルから、…