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企業のセンスが問われる時代 「デザイン思考」とブランド戦略

ユーザーに対する深い共感が鍵 デザインシンキングとブランド構築

  • 岩嵜博論氏(博報堂)

商品機能が著しく向上した結果、コモディティ化が進んだ現在。機能の訴求だけでは消費者に自社ブランドを選んでもらうことは難しくなっている。この時代に消費者に選ばれるブランドになるためには、どうしたら良いのか。デザインシンキングから、その道筋を読み解いていく。

D2Cモデルの代表的な例として知られているメガネブランドWarby Parkerの店舗(2018年3月サンフランシスコ市にて筆者撮影)。

デザインのマインドセットをビジネスに生かす

デザインシンキングを一言で言えば、デザイナーやクリエイターのマインドセットやプロセスを体系化した事業、製品・サービス創出の方法論だと言えます。欧米のデザインスクールを中心に体系化され、IDEO社のようなデザイン・イノベーション・コンサルティング会社がビジネスに展開し、新製品・サービス開発や新規事業開発の現場で活用されています。

筆者はストラテジックプラナーとしてのバックグラウンドを持ちながら、アメリカのデザインスクールに在籍し、ビジネスにおけるデザインシンキングの応用を学びました。デザインスクールといっても実態はビジネスとデザインを融合した、イノベーションを生み出すための方法論を学ぶプロフェッショナルスクールという雰囲気でした。

デザインシンキングがビジネスの現場に定着するに従って、その知識はデザインスクールなどのクリエイティブコミュニティだけではなくビジネススクールなどのビジネスコミュニティにおいても扱われることが多くなってきています。

例えば、2015年9月の『Harvard Business Review』誌では、「The Evolution of Design Thinking(デザインシンキングの進化)」という特集が組まれました。そこでは、デザインシンキングを「ユーザーに共感(Empathy)すること、プロトタイピングを手法とすること、失敗に対する寛容さを持つこと」と定義されています。

2018年5月には、経済産業省と特許庁の産業競争力とデザインを考える研究会の「『デザイン経営』宣言」が発表されました。

この宣言の中で、「デザイン経営とは、デザインの力をブランドの構築やイノベーションの創出に活用する経営手法です。その本質は、人(ユーザー)を中心に考えることで、根本的な課題を発見し、これまでの発想にとらわれない、それでいて実現可能な解決策を、柔軟に反復・改善を繰り返しながら生み出すことです」とされています。この定義は前述の「Harvard Business Review」誌のものとも近く、デザインシンキングの文脈を考慮したものだと考えられます。

これらの定義から、デザインシンキングにおいては、人・ユーザー中心に考え、共感を起点にすることの重要性が語られていることが分かります。ちなみに、デザインシンキングの世界において共感という概念を指すときには、「Empathy(エンパシー)」という言葉が用いられることが多いようです。

似たような言葉に「Sympathy(シンパシー)」という言葉がありますが、エンパシーはシンパシーよりもさらに相手の気持ちに入り込む、あたかもその人になったかのような気持ちになるほどの深い共感という意味があります。このことからも、デザインシンキングでは、エンパシーのような、人・ユーザーに対する深い共感が重視されていることが分かります。

経験や体験が重視される現在 ブランド構築の変遷から考える

「『デザイン経営』宣言」で特筆すべきなのは、デザイン経営の定義の中にブランド構築が言及されている点ではないでしょうか。この報告書の中では、「デザインは、企業が大切にしている価値、それを実現しようとする意志を表現する営みである(中略)。顧客が企業と接点を持つあらゆる体験に、その価値や意志を徹底させ、それが一貫したメッセージとして伝わることで、他の企業では代替できないと顧客が思うブランド価値が生まれる」とされています。

ここで重要なのは、顧客体験の中に企業が提供する価値を表現するのがデザインの役割であるとされている点です。ブランド構築において体験がこれまで以上に重要になってきていることがその背景にあります。

ブランドの語源は家畜に焼印を押して一見区別がつかない家畜を見分けるようにしたことにあると言われるように、ブランド構築は、名称やシンボルなどのアイデンティティによる差別化から始まりました。アイデンティティは製品パッケージに留まらず、ポスターや広告、近年ではWebサイトなどの媒体において展開されるようになり、その一貫性が重視されました。

その後、このアイデンティティの方法論が一巡し、一貫性だけでは差別化が難しくなります。そこで生まれたのが、経験や体験といった概念です。体験が重視されるようになった背景には、パッケージグッズを大規模流通で販売するという従来のモデルとは異なる、メーカー機能と流通・店舗機能を一体化させたビジネスモデルの登場の影響も大きいと言えるでしょう …

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企業のセンスが問われる時代 「デザイン思考」とブランド戦略

機能・品質だけでは商品・サービスの差別化が難しくなっている現代。消費者に選ばれるブランドになるためには、いかに共感を醸成できるかがカギになります。理屈を超え、人の心に働きかける。消費者の共感を得るためにはどうしたら良いのでしょうか。

ひとつのヒントが、世界的に注目される「デザイン思考」にあります。昨今、「デザイン思考」を経営やブランド戦略に取り入れる動きの機運が高まっています。本特集では、「デザイン思考」をマーケティング領域で注目される「共感」や「体験デザイン」の文脈で読み解きつつ、ブランド戦略に取り入れる方法論を、国内の先進企業の取り組みを交えながら紐解いていきます。

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