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企業のセンスが問われる時代 「デザイン思考」とブランド戦略

コモディティ時代の処方箋 求められるのはブランドへの共感

  • 金森 剛氏(相模女子大学)

機能だけで商品に優劣がつけづらくなっている今、消費者に魅力を感じてもらい、選ばれるには共感を得ることが不可欠だ。共感の醸成で、鍵となるのがブランドの「物語」。共感を生み出す「物語」を活用する戦略とは。

魅力的なブランド体験は「物語」から生まれる

コモディティ時代にブランド力を強化するには、顧客の共感を獲得できるだけの優れた「ブランド物語」が必要になります。説得力のある物語が顧客のブランド経験を方向づけるのです。

一方で物語を論理的な因果連鎖であると見るなら、経営者が自社のブランド価値の構築方法について分析する際の手法としても活用できます。顧客への発信のための物語と戦略分析のための物語の両方が、いま注目されています。

point 1
ブランド共感の構造

「共感(empathy)」とは他者の感情状態に対する同期的な反応で、他者の感情状態を共有する精神機能です(梅田編 2014)。例えば母親は、自分の子どもが転んで膝小僧を擦りむいたとき、自分でも同じような痛みを感じることがあります。これが典型的な感情の共有、共感状態です。

ブランド・マーケティングの分野でも同様に、消費者がブランドに対して共感すると、ブランドと一体化して、ブランドと痛みを分かち合うようになり、その活動に参加し、ブランドを支援したくなります(図表1)。

図表1 ブランド物語と共感
出典:金森 2014

ブランドと一体となってその価値を高めるためには、多くの人に良さを知ってもらい、使ってもらう必要があります。その意味で口コミはブランドに対する支援活動になります。口コミが盛んになると、ネットなどのファンのコミュニティの場で、ブランド企業やブランドのファンとの交流・対話が生まれます。

その結果、ブランドの情報が豊富に流通することで、そのブランドがどのような人によって、どのような方法でつくられてきたのかが分かるようになり、ブランドに関する透明性が向上します。そのことが消費者にとって良いブランド経験になります。

口コミはまた、ブランド物語を創造し、流通させます。ブランドの「物語(narrative)」とは、ブランド開発の経緯や提案するライフスタイルなどについて語られた(narrated)ものです。例えば登場人物が困難に立ち向かって、仲間の助けを得て勝利する、という起承転結のある物語情報は説得力が高く、受け手に対する影響力が強いということが実証されています。このようなメカニズムで、ブランド物語はブランド共感を促進します。

以上がブランド共感の構造です。コモディティ化が進行するなかで、ブランディングの重要性はますます高まっています。ブランディングの目的はブランド共感を強化することであり、顧客の心理的ロイヤルティを向上させることに他なりません。そのためには良いブランド経験を提供する必要があり、その重要な手段がブランド物語なのです。

point 2
ブランド物語の内容

ブランドには3種類あると言われます(イアコブッチ編 2001)。第1に「機能ブランド」とは、他ブランドと差別化された、圧倒的に優れた製品機能に対する感動を基礎としたブランドです。第2に「イメージ・ブランド」は、ラグジュアリー・ブランドを典型とし、上流階級イメージを持っていることで価値があります。第3に「経験ブランド」は、良いブランド経験によってブランド力を強化しています。

一般にイメージ・ブランドをつくるには時間がかかります。機能ブランドをつくるには巨大な研究開発投資が必要です。これらは大企業にしか実現できないブランディングです。それらに対して経験ブランドは、上手にターゲットを絞ってブランド経験を設計すれば、相対的に容易にブランドが開発できます …

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企業のセンスが問われる時代 「デザイン思考」とブランド戦略

機能・品質だけでは商品・サービスの差別化が難しくなっている現代。消費者に選ばれるブランドになるためには、いかに共感を醸成できるかがカギになります。理屈を超え、人の心に働きかける。消費者の共感を得るためにはどうしたら良いのでしょうか。

ひとつのヒントが、世界的に注目される「デザイン思考」にあります。昨今、「デザイン思考」を経営やブランド戦略に取り入れる動きの機運が高まっています。本特集では、「デザイン思考」をマーケティング領域で注目される「共感」や「体験デザイン」の文脈で読み解きつつ、ブランド戦略に取り入れる方法論を、国内の先進企業の取り組みを交えながら紐解いていきます。

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