昨今DXが叫ばれるなか、150年以上にわたり全国民にサービスを届けてきた社会インフラを担う日本郵政グループも、抜本的な変革を迫られていた。マーケターとしてキャリアを歩んできた飯田恭久氏が、なぜ郵便局のDXに挑むことを決意したのか。歴史ある巨大組織において、どのように顧客価値を再定義し、変革を推進したのか。そのプロセスと学びについて、飯田氏が解説。本稿では「宣伝会議サミット」の講演の一部を紹介する。
「DXの本質」とは生活者の体験価値向上にある
私はジレット(現:P&G)を皮切りに、ディズニー、ダイソン、楽天と、不断にマーケティングを軸にキャリアを歩んできました。マーケティングとは机上の理論ではなく、生活者にとって意味のある価値をつくり出し、それを実際の行動変容として確かに生み出す営みだと考えています。ダイソン在籍当時、日本ではまだ認知が低く、「(100円ショップの)ダイソーの新商品ですか」と誤解されることすらありました。しかし日本専用モデルの開発、当時の相場の3.5倍という大胆な価格設定、量販店での本格展開、そして「吸引力の変わらないただ一つの掃除機」というコピーの統一により、ブランドの基盤づくりに挑みました。机上の空論ではなく、実践によって価値を証明することこそがマーケターの本質だと実感した経験です。
その私が日本郵政グループの...


