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2021年 マーケティング予測

強い意志と好奇心で、異分野の知識を探索 マーケターにこそ全体観が求められる

  • 入山章栄氏(早稲田大学)

マーケティングの業務が細分化されるなか、成果を上げ、事業に貢献するためにはどうしたらよいのだろうか。「マーケターは企業経営を俯瞰し、全体観を持つべき」と考える、早稲田大学大学院経営管理研究科の入山章栄教授に、その理由とマーケティング部門の役割について話を聞いた。

マーケティングの役割とは願望と現実の差を埋めること

僕はマーケティングの本質とは課題解決にあると考えているので、そもそも何が問題・課題なのかを見抜く力がマーケターには不可欠だと思います。

これは、『デザイン思考の先を行くもの』の著者・各務太郎さんが言っていて、なるほどと思ったのですが、「課題発見とは、自分の願望と現実の差」、つまり自分のやりたいことに対して、今の現実との差が全部課題になる。逆に言えば、自分に意思(願望)がないと課題は出てこないというんです。課題がないことには、マーケティング戦略は企画・実行できません。

仕事が細分化するなかで、目の前にある仕事をこなすことに追われる毎日が続くといった状況に陥ってしまうことも考えられます。しかし、こういった環境では、そもそも願望も課題も生まれないのではないでしょうか。

企業に属する個々人に意志や願望がなければ、その集合体である企業が進むべき方向性も見えてはきません。最近、「当社は、これからどうすればいいでしょうか?」といった、漠然とした相談に来られる方も増えました。逆に「何がしたいのか?」を聞くと意外と答えられない。そういう会社は多いと思います。そもそも、今のような時代に「何をすべきか?」という問いに対する正解などありません。正解がないからこそ、自らの意思が必要なのです。

もちろん、これは自分の業務だけではなく、顧客側も同じです。顧客側の本当の意思を見抜ければ、相手の願望を理解して、それと今の現実の差を埋めていけば、顧客の課題解決になるのです。

現在は企業内における役割や業務の細分化が進んでいますので、個別最適に陥らず、全体を俯瞰できるマーケターの存在が求められていると思います。

この俯瞰する視座の重要性はコロナ禍でさらに高まったと言えます。そう言えるポイントは3つあります。ひとつは当然、社会全体の不確実性が高くなっていること。

コロナ前から不確実性は高かったですが、それがさらに高まっています。だからこそ、企業においてはこれまでの延長線でものを考えるのではなく、イノベーションを起こすことが不可欠です。既存商品・顧客に対するマーケティング活動の継続も必要ですが、目の前にある業務から一度、目線を外し、俯瞰の視座に立って、顧客の課題を見つける。そしてこれまでにない商品・事業をつくるべきときなのです。不確実性が高くなる社会においては、既存の商品・顧客を対象に活動し続けることは、逆にリスクにもなりかねません。

2つめは、経路依存性です。大手企業ほど経路依存性、つまりさまざまなモノが絡み合っている組織なので、どこか一部だけを変えようとしても変えられなくなっています。例えばコロナによって...

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2021年 マーケティング予測

マーケティング・コミュニケーション活動における手法やメディアだけでなく、マーケティング活動においても、施策が複雑になればなるほど、事業会社側の組織も、またそれに相対するパートナー企業の組織や人材も専門特化し、細分化していく傾向にあります。しかし高い専門性を求められながらも、企業におけるマーケティング活動の全体像を把握しなければ、個々の専門性を発揮して成果につなげるのは難しいもの。それでは2021年に「マーケティング」という言葉を考える時、その全体像をどのように理解・把握すればよいのでしょうか? マーケティング、マーケティング・コミュニケーションを俯瞰の視座で捉える最前線の実務家・研究者の考えを聞きます。

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