AIが商品を推薦してくれる時代になったが、生活者はその答えをうのみにするのではなく、SNSやコミュニティで「自分の界隈に合うか」を確かめている。そうした購買行動を経てロイヤル化していくAI時代の生活者に、従来型の囲い込むCRMは有効とは言えない。偶発的な購買を自分らしさの発見と継続利用へつなげる、新たなロイヤル顧客育成の考え方について、電通 データマーケティング局 グロースコンサルティング1部 部長の宮前政志氏が解説する。
「確認」のために残る検索行動 AIは推薦する、界隈は保証する
マーケティング業界では近年、「GEO」という言葉が広がっています。これまでのSEOが「Googleで検索されるための最適化」だったのに対し、GEOは「AIに推薦されるための最適化」を指します。確かにAIは便利です。「おすすめの美容液は?」「高評価の電動歯ブラシは?」こうした質問に対し、AIは膨大な情報を整理し、最適な候補を瞬時に提示してくれます。
しかし私は、GEOという考え方に少し違和感を持っています。なぜなら、実際の購買行動はAIに推薦された瞬間に終わらないからです。SEO時代、生活者は自ら検索し、自社サイトを見て、口コミを読み、比較サイトを巡回しながら商品への信頼を確かめていました。時間をかけて情報を収集し、自分なりの納得をつくっていたのです。
一方、AI時代になると、この情報収集の大部分をAIが代行するようになります。すると検索は不要になるのでしょうか。実際にはそうではありません。むしろ検索の役割そのものが変わり始めています。これまで検索は「発見」のために行われていました。しかしAI時代の検索は「確認」のために行われます。生活者はAIから推薦を受けた後に、SNSやコミュニティへ移動し、その商品の空気感を確かめます。「本当に人気があるのか」「どんな人が使っているのか」「自分と同じ価値観の人たちはどう評価しているのか」。そこで確認しているのはスペックではありません。「このブランドは自分の所属する界隈に受け入れられているか」という所属感です。
AIが正解を提示しても、人は最後に“人間の空気”を見に行きます。AIを信用していないのではなく、AIだけでは安心できないからです。そのためAI時代のブランド設計は、AIに推薦されるだけでは足りません。必要なのは、AIに推薦された後に界隈で信用保証されることです。私はこの視点を「TEO(Tribe Engine Optimization)」と呼んでいます。
GEOが「AI推薦最適化」だとすれば、TEOは「界隈文脈最適化」です。AIが発見を担い、界隈が信用を担う。これからの購買行動は、この二段構造で理解する必要があります。そして、この変化はCRMのあり方そのものを大きく変え始めています。
「計画購買」と「偶発購買(※1)」の違いを説明するとき、私はよく「婚活と恋愛」の違いに例えます。
※1 目的なく情報回遊をするなかで、商品をSNSで発見したり特定コミュニティから推奨される、もしくは店頭での偶発的...


