花王が2015年に「スモールマス」を提唱してから今まで、同社では多くのスモールマス向けブランドが発売されてきた。価値観が多様化する現代、小さくとも一定のニーズボリュームがある市場を捉えるにはどうすればよいのか。「エッセンシャルflat」の事例をもとに、同社のヘアケア事業部シニアマーケターの小林達郎氏に聞いた。
花王「エッセンシャルflat」

市場領域
ヘアケア/シャンプー/美容
ターゲット(対象顧客)
髪の「くせ・うねり」に悩む人
ターゲティングの肝
・髪の手入れを取り巻く行動に着目したこと
・ブランドミッションの実現に立ち返っていること
コミュニケーション手法
・マス広告で新規を獲得し、その後にデジタルでの1to1に切り替える
・広告配信はターゲットを限定しすぎず、広めに配信しておき、広告クリエイティブや商品のネーミングで「くせ・うねり向け」であることを明記する
スモールマス向け新ブランド「エッセンシャルflat」が誕生
生活者の価値観が多様化する中でマス市場が縮小・細分化しながらも、一定の規模を持つ市場を指す「スモールマス」。提唱したのは7年前の花王だ。
それ以降、花王ではスモールマスにアプローチする形で生まれたブランドが多く存在する。ヘアケアのロングセラーブランド「エッセンシャル」から生まれた「エッセンシャルflat」もそのひとつだ。
「エッセンシャルflat」は、髪にくせ・うねりがある人に向けて開発されたブランド。2019年の発売以来、くせ・うねりが原因で毎朝の髪の手入れにストレスを感じている生活者に向けて価値を提供している。
ターゲティングのヒントは髪の手入れを取り巻く“行動”
なぜ花王は、くせ・うねりという課題に着目したのか。同社の小林達郎氏は、生活者のインサイトを捉えるために、「ヘアケア行動に注目した」と開発の背景を話す。
「当社調査の結果、髪の手入れに悩む生活者は8割以上。そのうち約5割が“髪にくせ・うねりがある”と回答しました。ターゲットを絞っているとはいえ、ニーズに一定のボリュームがあることがわかると思います。ですが、市場のニーズを評価するには定量的なデータだけではなく、定性評価も必要です。そこで注目したのが“ヘアケア行動”。くせ・うねりに悩む人がどのように髪の手入れをして、具体的に何に悩んでいるのかがわかれば、その市場で商品に求められている価値も自ずと見えてくるはずです。ポイントになったのは商品の利用シーンそのものを想像することではなく...