どれだけ新しいテクノロジーを駆使したところで、ターゲットの心理や心情の深い理解なしに、心に届くキャンペーンは実現し得ません。
それならば人の心を捉え、行動を喚起した広告キャンペーンを読み解けば、その背後には、人の根源的な欲求や心理が見えてくるのではないか…。そんな仮説のもと、世界の秀逸プロモーションを100点弱集めてみました。
事例を選定し、さらにその背後にあるインサイトを分析・解説していただいたのは、日本に留まらない活躍をされている12名のクリエイターやプランナーの方々。
12名の「選者」の方々に国内外の秀逸事例を解説いただきながら、有意なインサイトを得る方法から、そのインサイトを具体的な施策に落とし込む際のポイントを考えていきます。

資生堂
クリエイティブディレクター
小助川雅人(こすけがわ・まさと)
資生堂入社後、営業経験を経て宣伝部(現宣伝・デザイン部)に転部。CMプランナー、クリエイティブディレクターとして多くのブランドを担当。2015年に「high school girl?メーク女子高生のヒミツ」をローンチ。アドフェスト、ワンショー、ニューヨークフェスティバルなどの国際賞を受賞。
事例の選定テーマ
ヒューマニティー
広告・キャンペーンが捉えた「インサイト」
クリスマスシーズンに人は優しい気持ちになりたくなる。
ジョン・ルイス クリスマス広告
強欲な守銭奴スクルージは、ある夜幽霊の導きによって改心し、自分の中にある優しい気持ちを思い出して、クリスマスに人々に施しをするようになる。1843年に発表されたチャールズ・ディケンズの小説『クリスマス・キャロル』のあらすじだ。
百貨店にしてみれば、クリスマスはプレゼントを選ぶ買い物客をどれだけ呼び込めるかという、まさに勝負のシーズンでもある。イギリスの百貨店ジョン・ルイスのこのシリーズ。インサイトは「クリスマスシーズンに人は優しい気持ちになりたくなる」ということだろう。
このシリーズでは、毎回ムービーの主人公をテーマにしたセンスのいいグッズが用意されていて、プレゼントとしてあげたら、さぞかし喜ばれるのではないか。その他にも店頭で行われるイベント、社会貢献など、さまざまな仕掛けが散りばめられているのだが、そのどれもが、自分にとって大切な誰かのことを思い出し、「優しい気持ちになる」ための装置なのだ。
しかし、ムービーの主人公を決め、キャラクター化し、商品化までするには、どれだけ事前から準備しているのだろう、とその戦略の周到さをいつも思う。
広告・キャンペーンが捉えた「インサイト」
子どもにはのびのび育ってほしいが、
モノを壊されて損はしたくない。
ジョン・ルイス「Tiny Dancer」
私には3歳の娘がいる。彼女がどんな人生を送るのか、それは親にはわからないけれども、ただ何か好きなことを見つけてくれればいいと願っている ...