AI時代のブランド成長は「体験・言語・構造」で再設計される

公開日:2026年8月31日

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  • XA Holdings

生成AIの普及により、表現のコモディティ化が進みブランドの個性が埋もれるという課題に対し、これからのマーケティングやクリエイティブはどうあるべきなのか。日頃からブランディングやデジタルマーケティング領域で深く協働し、AI時代の新たな組織像を共に模索する4名が、「戦略的クリエイティブパートナー」の新たな役割とブランド成長の本質を語り合った。

(左から)XA Holdings 代表取締役/CEO 河野貴伸氏、サザビーリーグアウルスケープ 代表取締役社長 相川慎太郎氏、Super Normal/Engagement Commerce Lab. 代表取締役 奥谷孝司氏、ゴールデンレコード 代表/アートディレクター 大野 隆氏

AIに正しく伝わるか? 情報設計の重要性

―AIの登場によって、ブランドのつくり方はどこが最も大きく変わったと感じていますか。

河野:“激変した”という実感はまだないのですが、「きちんと言語化しなければ」という認識が確実に広まっていると感じています。具体的には、以前は後回しにされがちだったブランドの存在意義や理念といった根幹を本格的に整理する意識に変わってきた。AIに正しく指示を出すには言語化が不可欠だからです。

奥谷:これまではマーケターが言語化しきれずとも、クリエイターの“アウトプットのセンス”で帳尻を合わせることができたのかもしれません。ですが、今はAIに話しかけることで自分の思考の足りなさが明確に見えるようになってしまいました。

相川:現場視点でもバナー広告などはAIで量産できますが、そのぶん表現がバラバラになる問題が起きています。一貫性を保つには、やはりブランドコンセプトの言語化、つまりナラティブが重要ですね。

大野:まさに、“強いブランド”は一貫した記憶の積み重ねで人々からの信頼を得ています。表現がブレて分散すると信頼が蓄積されず、AIからも「よく分からないもの」と判定される。だからこそ、ブランドの軸がこれまで以上に問われていると感じますし、そこに言語化が重視される背景があると思います。

リアルな体験と顧客の声がブランドを育てる

―顧客と企業の関係性はどう変化しているのでしょうか。

河野:デジタル化やEC化が進んだ結果、現在はリアルな体験価値が再評価されていると思います。以前は資金力のある企業しか構築できなかった独自のアプリや顧客システムなどのリアルな体験を拡充させるための仕組みが、テクノロジーの進化やコスト低下によって、小規模な企業でも手軽に実現できるようになっている。単なる回帰ではなく、より高度な体験価値をどの企業も提供できる時代へ進化しているのだと思います。

奥谷:デジタル化が進んでも、衣服の着心地や居心地の良さといったリアルな体験の本質は変わりません。届ける体験を企業側が正しく把握することが、AI時代のブランドづくりでブレない価値になります。

さらに言えば、これからは「顧客はブランドを生成する共創パートナー」になっていくと考えています。例えば、「書類入れ」が“フライパンの整理に便利”とバズるといった意図せぬ使い方の発見や顧客の揺らぎも、AIを活用すれば、以前よりも早く見つけることができます。今後は、企業がそこに寄り添う関係性の設計も重要になると思います。

相川:大切なのは顧客起点の思考だと思います。店頭の接客やECの購入まですべてを顧客起点で一貫させるべき。AIを用いた解析でフィードバックサイクルを速く回せるようになったのも大きな変化です。

―AIに正しく理解されるブランドと、誤解されるブランドの違いはどこにありますか。

大野:AIは人間以上に情報の統一性を見極めます。矛盾があると指摘される一方で、情報や文脈が統一されたブランドはAIも正しく解釈して顧客に魅力を届けてくれる。SEOやPRも含めたコミュニケーション全体で一貫して伝える情報設計の重要性が高まっています。

奥谷:AIは顧客レビューやコミュニティの声も読んでいますからね。企業の情報だけでなく顧客の声も含めたエコシステム全体で評価されるため、そこから目を背けるブランドは不利になります。

河野:組織内で理解がずれていることも少なくありません。顧客データと商品データを構造的に整備し、誰がなぜ商品を選んでいるかを把握することが、AIに正しく理解される土台となります。

人とAIが共有するブランド運用のガードレール

―XAが提唱する「Brand OS」について教えてください。従来のブランド支援と何が本質的に違うのでしょうか。

河野:「Brand OS(ブランド・オペレーティングシステム)」とは、分析、戦略立案、組織への浸透までを一元管理し、ブランドの思考をチームとAIが共有できる仕組みです。AIが出てきて最も大変なのは、人間側が進化のスピードに追いついていないこと。

見なくてはいけない領域や対処すべき問題が増える中、ブランドの運用においては、いかにガードレールを敷いてブレずに意思決定を進めるかが重要です。走りながらでも守れる軸をブランドとして持つ、これが「Brand OS」の考え方です。

―そうした軸ができると、外部パートナーの支援のあり方も変わっていきそうですね。

奥谷:丸投げでプロセスがブラックボックス化する時代は終わりました。 AIでブランド自体の設計を行い、企業が自走で運用する時代になるのではないでしょうか。

大野:“丸投げ”されるのではなく役割が変わるのだと思います。そこにおいて、“なんとなくいい感じ”を言葉や形にするディレクションの本質は変わらない。人間の想像力をAIに分かりやすい構造に落とし込む力が、クリエイターに求められるようになると思います。

―最後に、これからますますAIが発展していく時代に「選ばれるブランド」をつくるためのメッセージをお願いします。

相川:ブランドづくりの裾野が広がり、誰もが「自分たちはどんな価値を提供する存在か」を発信しやすくなったのは良いことです。しかし、独自性をどうつくるか、仮説と検証を繰り返す力は、引き続き人間が担うべき領域だと考えています。

大野: AIはどんな問いを立てるかでアウトプットは全く変わる。だからこそ、曖昧な価値観を概念として言葉にする力が、ますます大事になるのではないでしょうか。

奥谷:AIと深く対話しながら試行錯誤を重ねることで、あらゆるブランドづくりにおいて表現や施策の精度を極限まで高められる時代になったと感じています。

河野:みなさんの意見を聞いて改めて、マーケティングがテクニックでどうにかなる時代は終わり、きちんと人が頑張る時代に戻ったと感じます。AIはスピードも質も求めますが、その分、本質的な思考や体験の蓄積が問われる。ブランドは「つくる」から「運用する」ものへ。その運用に責任を持つ設計者の力量が、AI時代の競争力を決めると考えています。

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