そのAIは、誰の味方なのか? 「両手」の構造は、AIに引き継がれるか

公開日:2026年9月02日

  • 山根 宏彰氏(富士通)

AIエージェントが検索や比較、決済までを代行する「Agentic Commerce」の時代が到来しつつあります。利用者の利便性が飛躍的に高まる一方で、浮上するのが「そのAIは本当に利用者のためだけに動いているのか」という利益相反の問いです。かつて日本の不動産仲介が抱えてきた構造課題を補助線に、AIエージェント時代における「信頼と透明性」のあり方を考えます。

双方から手数料を受け取る「両手取引」の問題点

日本の不動産仲介では、ひとつの会社が売り手と買い手の双方から手数料を受け取る「両手取引」が合法的に続いてきた。2024年の売買仲介実績から比率を推計した民間試算では、住友不動産ステップが約51%、三井不動産リアルティグループが約38%だった。一般的な仲介手数料の上限式を双方分合計すると、税抜きで「売買価格の6%+12万円」。片手取引の2倍になる。

禁止されていない理由は、媒介の法的性格にある。媒介は、当事者に代わって法律行為をする代理とは異なるため、民法が禁じる双方代理には直接当たらない。ただし、売主のためによりよい買主を探す役割と、自社の報酬を増やす誘因は緊張しうる。その緊張が他社への紹介拒否として表面化したものが「囲い込み」だ。国土交通省は、両手媒介を目的に取引状況を故意に隠す行為をそう説明している。売主は、よりよい条件を出す買主に出会う機会を狭められる。

もちろん、両手取引の比率が高いだけで、囲い込みを意味するわけではない。注目すべきは違法行為の有無ではなく、「利用者の選択を支える役割」と...

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