インサイトの重要性が語られて久しい一方で、調査結果が意思決定や戦略に十分に活かされていない─。情報過多と価値観の多様化が進む現在、リサーチは単なる「情報を収集する手段」から、共に未来を導き出す「価値共創のプロセス」へと役割を拡張させる必要性に迫られている。企業・生活者・リサーチャーがフラットな関係性で未来を描く「価値共創型リサーチ」を掲げ、業界構造そのものの変革に挑む10 Inc.に話を聞いた。
企業・生活者・コンサルタントで共に未来を描く仕組みを実現
生活者を単なる「回答者」と捉える従来の一方通行なリサーチは、世の中に情報が溢れ価値観が激しく移り変わる現代において限界を迎えつつある。こうした状況下で、リサーチ業界を「持続可能な形」へと進化させているのが、約30名の少数精鋭チームの10 Inc.である。同社は、リサーチ会社出身のリサーチのプロから事業会社や広告会社出身のマーケティングプランナーまで、多様なバックグラウンドを持つプロフェッショナル集団だ。メンバーの半数を占める定性リサーチのスペシャリストによる高度な洞察スキルを基盤に、定量と定性を自在に統合する「マルチモーダルな調査」を展開。国内MROC※のリーディングカンパニーとして、インサイト発掘の新たなスタンダードを確立している。
※マーケティング・リサーチ・オンライン・コミュニティ
この経営戦略の背景には、10 Inc.代表取締役CEO・佐藤尊紀氏が抱いていた、業界の構造的課題への危機感がある。
「今、リサーチに求められているのは、良質なデータをいかにスピーディーに『納得感のある意思決定』へと接続させるかという点です。これまでリサーチが生み出すアウトプットは、精緻な事実確認に重きを置くあまり、ビジネスを動かすための『提言』へと昇華させるためのリソースが構造的に不足しがちでした。分業化が進んだ現在のエコシステムでは、リサーチが、ビジネスの意思決定に近い場所で併走することが難しくなっています。リサーチャーもまた、膨大なデータ処理という『作業』に多くの時間を奪われ、人間ならではの感性を活かした『戦略立案』や『インサイトの洞察』に集中しきれない環境があるのです。
マーケティングの上流から下流まで分業化が進むあまり、統合的にリサーチできる人がほとんどいない。正確性を期する『100点のリサーチ』は業界の誇るべき品質ですが、その慎重さが現代のビジネススピードとの間にギャップを生んでいる側面もあります。さらに効率化の追求は、インサイトの源泉たる熱量を損ねています。生活者を『データソース』ではなく対等な『パートナー』と捉え直す。その視点の転換こそが、データの質を飛躍させます」。
顧客と価値を共創するプロセス「ヒト対ヒトの関係構築」へ
同社が提案する「価値共創型リサーチ」は企業、生活者、コンサルタントがフラットな関係性のなかで、未来の可能性を共に描くプロセスだ。その特徴は「アジャイル」「インタラクティブ」「コンテキストフル」の3点に集約される。
「従来のリサーチではモニターは単なるデータソースと捉えられていることも多かった。しかし、インサイトは、人々の行動の背後にある文脈にこそ宿ります。共創型リサーチでは双方向の対話を通じてモニターは『パートナー』となり、リサーチャーは『意思決定の関与者』へ、意思決定者は『統合的な指揮者』へと役割を担うようになることが理想です」(佐藤氏)。
この思想を支えるのが、同社独自の3つのソリューションだ。ひとつが、自社で独自開発したMROCシステム「MindSquare®」だ。定性や定量だけでは見えない深層心理を「定性×定量」で多面的に探索する「マルチモーダル調査」を実現する。
「現代は企業側がオープンな姿勢で接すれば、モニターもオープンマインドになり、アクティブな意見が出るようになる」と佐藤氏は語る。
2つ目は、2026年3月ローンチ予定の「TETRA Square™」。SNSのアプローチを取り入れた、まったく新しい共創リサーチの場だ。同社コンサルティング事業部 ソリューショングループ シニアマネージャーの井出成博氏は次のように語る。
「『TETRA Square™』は、リサーチとSNSが融合したプラットフォームです。広告は一切流れず、“スローなSNS”を標榜しています。リサーチの側面があるとはいえ、多くの生活者が日々利用しているSNSと同じようにタイムラインがありユーザーの日常的な投稿が見えたり、イベントのような体験を加えたりしています。同じ興味を持つ人々が交流でき、自分が参加したアンケートの結果もリアルタイムで見ることができます。アンケート回答を従来のような『つまらない作業』ではなく、参加自体を楽しい体験にすることで、エンゲージメントの高いコミュニティを築くことができると考えています。将来的には数万人規模のSNSに育てていきたいです」。
3つ目は、同社独自の定性分析AI「Nullo AI Studio (仮)」。大量のテキストデータを要約するだけではなく、リサーチャーの洞察を支援する。「データ処理はAI、戦略的な意思決定は人間が行うという構造をサポートします。例えばSNS投稿やアンケートの自由回答などから感情やニーズ等も読み取り、分析するメニューが複数用意されているので、時間やコストの制約で不可能だった高度な分析や、複数の仮説検証も高速で実現できます」(井出氏)。
図表 10 Inc.の共創型リサーチ
こうした「価値共創型リサーチ」を導入した企業では、意思決定のプロセスに変化が起きている。ディシジョン・メーカーをも巻き込んで生活者の生の声を直接聞き、納得感のある迅速な合意形成が可能になったことで、意思決定のリードタイムが大幅に短縮されているのだ。「このアプローチは、多様な顧客接点を持つ企業やコンテンツ・クリエイティブを中核とする企業、迅速な意思決定を必要とする新規事業開発などにおいて、特に効果的だと考えています」(井出氏)。
10 Inc.が見据えるのは、テクノロジーとヒトの総合力で、リサーチデータを提供することにとどまらず、リサーチから企業のプロダクト、ひいてはコーポレートブランディングまでを進化させることだ。
「時間のかかるデータ整備や複数回の検証など、魂を削る作業はAIに任せ、人間は精神力を削らずクリエイティブな仕事に注力する。技術だけでなく、人ならではの感性や泥臭い対話も大切にしながら、お客さまと一緒に未来をつくっていきたいと考えています」(佐藤氏)。
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