1947年に創設され、優れた広告コミュニケーションを実践した広告主を顕彰する広告電通賞。2025年(第78回)の受賞企業である、マイナビの上席執行役員 穂積洋平氏と、花王のブランドクリエイティブを率いる簑部敏彦氏が、受賞作品の背景や広告賞に挑戦する意義について語った。
家族シャンプーから家族の愛のためのシャンプーへ
第78回広告電通賞のフィルム広告部門とOOH広告部門で金賞を受賞したのが、花王「メリット」のキャンペーンだ。施策の背景には、同社のヘアケア事業改革がある。製品機能だけでなく、顧客の「感情ニーズ」で事業を捉え直すもので、メリットは自然体やリラックスといった領域を担うブランドと位置づけた。従来の「家族シャンプー」というコンセプトから、「家族の愛のためのシャンプー」へと視点を転換。これが2024年から始まったコミュニケーションの核となった。「家族が成長することの嬉しさと切なさといった家族愛をブランドにのせ、共感を得ることを目指しました」と花王 第1ブランドクリエイティブ部長の簑部敏彦氏は振り返った。
マイナビが仕掛けた社会課題解決型プロジェクト
ブランドエクスペリエンス最高賞とSDGs特別賞優秀賞を受賞したのが、マイナビバイトの「座ってイイッスPROJECT」だ。海外ではレジスタッフが着席して勤務しているのに、なぜ日本では普及しないのか、という問いが起点となった。「人口が減る中で、ハンディキャップがある人やシニアも長く働ける環境づくりに貢献し、当社が掲げるパーパス実現に近づきたいという思いでチャレンジしました」と上席執行役員 穂積洋平氏。座れるアルバイト環境を整備するプロジェクトは、博報堂からの提案がきっかけとなり、三重県のSANKEIが椅子を製造、三社一体で実現に至った。
自社の「取り組みの集大成」に 広告賞応募の意義がある
マイナビにとって広告電通賞への応募は今回が初。「取り組みの集大成として、外部評価というフィードバックをもらえるのは貴重な機会。エントリーの過程で多くの気づきを得ることができました」と穂積氏は応募の意義を語った。受賞をきっかけに行政からの問い合わせも受けるなど、社会的な広がりも生まれているという。また簑部氏は応募の利点として「社内外の関係者のモチベーション向上」を挙げた。さらに、優れたクリエイティブで評価される企業には社外の優秀なクリエイターも集まりやすいと指摘。自社のクリエイティブの質を上げることにもつながるとの見解を示した。
広告電通賞は、取り扱い広告会社にかかわらず、全ての広告主に応募資格があり、選考は広告主・媒体社・クリエイター・有識者ら約500名から構成される審議会の選考委員が行う。簑部氏は選考委員も務めており「マイナビさんのように、いわゆる広告ではくくれないものも受賞しています。世の中を動かしたと実感できる取り組みについては、ぜひ応募に挑戦してみてください」と話した。
マイナビ
上席執行役員
穂積洋平氏
花王
作成センター
第1ブランドクリエイティブ部長
簑部敏彦氏
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広告電通賞審議会事務局
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