多くの国でサービスを展開するLINEヤフーは、ブランド表現を統一するため、コーポレートフォント「LINE Seed JP」を開発。フォント制作に携わったMonotype・森田隼矢氏とプロジェクトを推進したLINEヤフーの柳沼航太氏が、開発の背景から効果に至るまで、プロジェクトの裏側を語った。
言語や文化が異なってもLINEヤフーらしさを感じてほしい
LINE(現LINEヤフー)は、2020年の英語版のコーポレートフォント「LINE Seed」のリリースに続き、2022年に日本語版の「LINE SeedJP」を公開した。同社ブランドデザイナーである柳沼航太氏は、「LINEは多くの国や地域で利用されており、言語や文化が異なっても“LINEらしさ”を感じてもらうため、各言語で共通したデザインのトーンを持つフォント開発を目指しました」と話す。
日本語フォントは文字数が多いが、英語版をベースに制作し、段階を踏むことで社内承認のハードルを下げ、グローバル全体でのブランド表現の統一のプロジェクトを進めることができたという。
「LINE Seed JP」には7000文字以上の漢字があるが、すべてゼロからデザイン。LINE(現LINEヤフー)全体のデザイン指針をもとにディスカッションしながらフォントのチェックを進めたという。完成したフォントは、角の処理が丸い「カドマル」が特徴。また文字の内側の空間である「ふところ」が広く取られ、「シンプルでありながら、穏やかで、ユーザーに寄り添うような優しい雰囲気のフォントに仕上がりました」とMonotypeタイプデザイナーの森田隼矢氏は振り返った。
使われ、語られ、広がっていくオープンソース化の狙い
「LINE Seed JP」の特筆すべき点は、誰でも自由に使えるオープンソースとして公開したことだ。柳沼氏はその狙いを「フォントを企業内の資産として囲い込むのではなく、ユーザーをはじめとする社会との“共創のプラットフォーム”と捉えているため」と語る。フォントを通じ、多くの人にLINEヤフーの価値観を体験してもらう。その結果「ブランドが語られて広がっていく」という同社らしいアプローチを実現した。
導入後の効果と広がり「一貫性が格段に強く」
導入から3年が経ち、柳沼氏はその効果を3点紹介した。ひとつ目が、文字そのものがデザインの主役となった表現が生まれ、ブランドの世界観が豊かになったこと。2つ目が、「LINE Seed JP」をベースに新たなサービスロゴが制作されるので、スピードと品質が向上したこと。3つ目が、あらゆるタッチポイントでフォントが使用され、組織としての一貫性が格段に強くなったことだ。
コーポレートフォントの設計は、ブランドの基盤となるもの。「フォントを通じグローバルでの一貫性を保つことが、ユーザーの信頼獲得につながります」と森田氏は話した。同フォントは、TBS系の情報番組『THE TIME,』のテロップに採用されたほか、Google Fontsとしても導入が予定されているなど、社外での活用も進んでいる。
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