マーケティングにおいてもデータの利活用が必須となり、CMOがCIOやCDOと連携すべき局面は増えている。しかし顧客起点の企業DXを進めるに際しても、いまだCMOとCIO・CDOの間には深い分断が存在するという声も聞く。この変革期にマーケターは部門間の壁をどう乗り越え、顧客にとっての価値創出につなげたらよいのか。企業のDXを推進する国内外のCIOやCDOと深い接点を持つガートナージャパンのリサーチ&アドバイザリ部門シニアディレクターアナリストである一志達也氏に聞く。
CMOにとって鍵となるのは「セキュリティ」と「AI」
―CIO・CDOの方々から見て、マーケティング部門との連携や課題意識はどのように映っていますか。
私が接するCIOやCDOの方々との会話で、「マーケティング」という言葉が話題に上ることは、ほぼありません。背景には大きく2つの要因があると考えています。
第一に、日本企業では依然としてマーケティングを専門的に担う明確な組織体制が整っていないケースが多いこと。第二に、仮にマーケティング部門が存在しても、他部門と連携せず独立して動いているケースが大半であることです。
例えば、DXやデータ活用の文脈では、営業部門が「もっとデータを活用すべきだ」とプレッシャーを受ける場面が目立ちます。本来なら、マーケティング部門がデータに基づくリード獲得や顧客育成を導き、営業活動を支える役割を果たすべきです。しかしマーケティング機能が弱い、あるいはその役割をコミュニケーション施策に限ったものと狭く定義している場合、データ利活用の議論にマーケティング部門...