誕生45周年を迎えたロッテ「雪見だいふく」が、東京・中目黒に体験型カフェ「my雪見だいふく」を期間限定でオープンした。アイスやトッピングなど合計648通りものカスタマイズが楽しめる体験がSNSで拡散され、予約が殺到している(開催期間は9月23日まで)。共感を生む「ブランド体験」を提供する狙いとは。ロッテの吉見尚子氏と、プロデュースを担ったテー・オー・ダブリュー(TOW)の渥美正彦氏、高橋茉夕氏に話を聞いた。
(左から)ロッテ マーケティング本部 第一ブランド戦略部 アイス企画課 主査 吉見尚子氏、TOW アカウントサービス本部 渥美チーム 寺尾グループ プロデューサー 高橋茉夕氏、TOW アカウントサービス本部 副本部長 兼 渥美チーム チームリーダー プロデューサー 渥美正彦氏
若年層を呼び戻す 会いに行きたくなるブランドへ
ーリアル店舗に挑戦した背景と狙いについてお聞かせください。
吉見:「雪見だいふく」は幅広い世代から高い認知をいただいているブランドです。しかし、幼少期に食べていた方も、10代後半~20代になると他ブランドへ流れてしまう課題がありました。離れてしまった若年層の方々に、「雪見だいふくってやっぱり楽しいね」「もう一回食べてみようかな」と再び距離を縮めていただくための“ブリッジ”をつくることが私のミッションでした。
渥美:誰もが知るロングセラーブランドだからこそ、スーパーマーケットで買うのとは違う「新しい体験」が鍵になると考えました。「おもち×アイス」という特徴的な商品構造を持つ雪見だいふくと、体験型イベントの相性は抜群に良いと感じていました。
̶「会いに行きたくなる」店舗設計のポイントはどこにありましたか。
高橋:チャレンジングだったのは、思い切って「企業・ブランド色を抑えた」ことです。通常のポップアップであれば、雪見だいふくのブランドカラーである「赤」を全面的に押し出すことも多いのですが、10~20代の方たちに「自分たち向けの空間だ」と楽しんでもらうには、企業・ブランド色が強すぎるのは逆効果。ピンクや白を基調とした、フラットな空間デザインにこだわりました。
吉見:社内では「もっと赤を使うべき」という意見もありました。しかしTOWさんと、お客さまの目線でどう受け取られるかを議論。キービジュアルのアイコンや商品提供の際のピンクのフォークなどの絶対に外せないアイデンティティは残しつつも、お客さまの体験を優先する方針を貫きました。
ー8種類のアイスに、トッピングと仕上げを自由に選べる「計648通り」という組み合わせの多さもSNSで話題です。
渥美:種類を絞る意見もありましたが、会議室で半日かけて試食した際、「和風で統一してみよう」「チョコスペシャルにしよう」と私たち自身がすごく盛り上がったんです。この「選ぶ」こと自体の楽しさをそのまま提供しよう、と。
吉見:ちょうどその頃に韓国へ視察に行き、カスタマイズのトレンドを肌で感じていたんです。「一消費者として自分たちが楽しいものは、お客さまも楽しいはず」と確信を持って進められました。
東京・中目黒に6月17日から期間限定でオープンしているテイクアウト専門カフェ「my雪見だいふく」。全648通りから来場者が選んだ組み合わせで、スタッフが一つひとつ手づつみする。
「リアルエンタメ」の熱量が本質的なブランド価値を高める
ー反響についてお聞かせください。
渥美:予約システムの同時セッション数が上限を超え、予約が取りづらい状況が出てしまったこともありました。実際の店舗でも楽しみながら、体験の列に並んでくださっているお客さまの姿を見て、熱量の高さに驚かされました。
高橋:企業色が強すぎないからこそ、お客さまも身構えず、純粋に「楽しい」「美味しい」と感じた体験を自然にSNSでも発信してくれているように感じています。
吉見:何よりも嬉しかったのは、原点である「美味しさ」の再評価につながったことです。今回、店舗ではオリジナルの生地を用意し、目の前で一つひとつ“手づつみ”で提供。
雪見だいふくの命である「もちもちとした食感」をしっかり体感いただき、「本当に美味しかった」というポジティブな声が多く生まれているのは大きな収穫です。
ー今回の伴走において、TOWはどのような役割を果たしたのでしょうか。
渥美:TOWでは、プロモーションとリアルエンタメを横断し、企業の課題を解決することに力を入れています。単に商品を「売る」のではなく、自ら足を運びたくなるエンターテインメント性を持たせながら、PRやデジタルの拡散、そして本質的なブランド価値向上までを統合的に設計・実行するのが私たちの役割です。
ただ「提案して終わり」ではなく、吉見さんはじめロッテの皆さんとは毎週のようにディスカッションを重ね、リアルな消費者の視点からスピード感を持って意見をぶつけ合うことができました。
ー最後に、今後のブランドマーケティングの展望をお聞かせください。
吉見:「雪見だいふく」は近年、機能的なスペックだけでなく、「癒し」などの情緒的な価値を提供するブランドへと進化してきました。長年にわたって多くの消費者に愛されているから、お客さまに振り向いていただくための新しいアクションも必要です。これからも、お客さまとともに驚きやワクワクを創り出し、互いに響き合えるようなコミュニケーションを紡いでいきたいです。
渥美:ロングセラーブランドが、これほどチャレンジングな体験型施策に挑むのは簡単なことではなかったと思います。
しかし、既存のお客さまを大切にしつつ新しい層の獲得に挑むことは全ブランドが抱える課題です。TOWはリアル体験領域のプロとしての強みを活かしつつ、ブランドが目指す未来に伴走していきたいと考えています。
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