顧客の好みや要求を学習し、最適な提案を返す。このCRMの理想は、AIの登場で初めて生まれたものではなく、少なくともデジタル革命が始まった30年前から示されている。チャネルが「販路」から「接点」へ役割を変え、AIがCRMの出口を広げるいま、企業は顧客とどう関係性を築くべきか。熊本県立大学教授の岩井琢磨氏が解説する。
AI時代に再浮上する1to1の思想
最初に、ある文章を紹介します。
「顧客は企業に自分の好みや要求をどんどん教えていく。それが企業に競争上計り知れない大きなアドバンテージをもたらす。企業は、顧客が教えれば教えるほど顧客の望みにピッタリ応えるのが上手になる。何をどのように提供したらよいのかを熟知するのだ。一社と学習関係に入ってしまった顧客は、競合相手からの誘惑にも抵抗力が強い。たとえ別の会社が全く同じ商品やサービスを作り出す実力を備えていたとしても、自分のことは再びゼロから教えてやらなければならない。しかも、最初の会社ならすでに熟知していることを。そのために費やす時間とエネルギーは尋常ではない」。
まさに、今回のテーマである「AI時代に顧客はどうロイヤル化するのか」を見事に言い表した記述ではないでしょうか。しかしながら、これはAI時代に書かれたものではあ...


