共感と熱狂を生む「関与型」コミュニケーション リアルな場が育むブランドの資産価値

公開日:2026年10月30日

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  • サイバーエージェント

世界最先端のクリエイティブから逆算し、いま取るべき進化の方向性を、ブランディング・体験・テクノロジー・アートの各領域を代表する有識者たちと、サイバーエージェントのクリエイティブ精鋭組織「NEW GREEN」のメンバーが議論する本連載。座談を通じて、「NEW GREEN」の思想と、そこから生まれる事例を紹介していきます。第2回は、「体験」を軸としたブランドコミュニケーションのこれからについて、新領域の杉山央氏とNOMOREの広屋佑規氏に話を聞きました。

(左から)サイバーエージェント インターネット広告事業本部 リードクリエイティブセンター NEW GREEN クリエイティブ/ PRプランナー 藤田 健太郎氏、NOMORE Chief Creative Officer /CCO 広屋 佑規氏、新領域 CEO / ART+TECHプロデューサー 杉山 央氏、サイバーエージェント インターネット広告事業本部 リードクリエイティブセンター NEW GREEN クリエイティブディレクター/コピーライター 桑原 誠尚氏

画面の「外側」から、当事者となる「時間の消費」へ

――広告におけるコミュニケーションが、動画やグラフィックなどの二次元から「リアルな体験」へとシフトしている背景には、どのような変化があるのでしょうか。

杉山:映像やグラフィックは、どこまで行っても受け手の「外側」にある情報にすぎません。

一方で体験型コンテンツには、明確に「時間」と「身体」という2つの不可欠な要素が入ってくる。わざわざその場所に自ら足を運び、自分の貴重な身体と時間をその空間に差し出すことで、人は単なる観客から一気に当事者へと変わるわけです。オンラインやSNS上で表面的な情報があらゆる場所に溢れかえっている現代だからこそ、リアルな場所で五感を使って得る真の体験価値が、相対的にぐっと高まっているのを肌で感じます。

広屋:まさにその通りですね。スマホ画面の中のコンテンツが溢れかえり、みんなの時間が奪い合われているからこそ、人々は誰かとリアルに分かち合える非日常の「ハレの体験」を強く欲している。単に話題づくりやバズを狙うためではなく、人の心を根底から深く揺さぶり動かすためのコミュニケーション手法として、「体験」が最も確実で効果的なアプローチになりつつあるのだと思います。

藤田:企業側の意識もここ数年で大きく変わっていますよね。かつての企業イベントと言えば、サンプリングや展示会など製品にとにかく触れてもらうための、単発な仕掛けにとどまりがちでした。

しかし最近では、ブランドのアイデンティティや哲学そのものを身体的に体験してもらうような、持続的なブランド資産としての高度な体験設計を求められる場面が確実に増えています。

桑原:従来の広告手法だけでは生活者の心を動かしづらくなっているからこそ、企業側もブランドの軸をつくる体験の重要性に気付いて、私たちにご相談に来られるのだと思います。一過性のプロモーションで終わらせず、ブランドの思想や歴史という「目に見えない本質的な価値」を直に体感してもらう装置として、体験をどう自社の持続的な資産として蓄積していくかが問われているのだと思います。

「没入」の先にある「関与型」と「内省型」への進化

――体験という観点では、近年「イマーシブ(没入型)」が注目されてきました。今後、イマーシブの次に来るもの、あるいは新たな体験の潮流として、どのようなものが考えられるでしょうか。

杉山:単に用意された世界観に没入するだけでなく、受け手自身が何らかの役割を演じたり意思決定を行ったりする「関与型」への進化だと考えています。

自分がその世界に介入することで物語の展開が変わるような再現性の低い体験こそが、「自分だけのストーリー」として圧倒的な価値を持つ。テクノロジーを活用したリアルタイム映像生成や各種センサー制御で、一人ひとりに最適化されたパーソナライズ体験を提供する取り組みもすでに加速しています。

広屋:「関与型」と同時に、SNS疲れや情報過多の反動として「内省型エンターテインメント」への需要も確実に高まっています。韓国での空前の読書ブームや、日本伝統の「禅」の思想のように、他人に見せるための「映え」や消費されるバズではなく、テクノロジーや空間と対話し、思考実験を重ねながら自らの思考や感情を静かに振り返るような、自分自身の内面に向き合う深みのある体験です。

桑原:人々が能動的に関与し、心が動く場にブランドがどう自然に寄り添えるかがポイントですよね。

スポーツ観戦を例にとると、観客が送る熱狂的な「声援」そのものが選手や空間に影響を与え、会場全体の価値を高めています。まさにこれこそが質の高い「関与」です。体験の場で求められるブランドの役割もこの歓声に近く、押し付けがましい自己主張ではなく、熱狂や共感の場を黒子としてサポートする立ち位置こそが、最も美しいコミュニケーションだと感じます。

藤田:その意味では、日本の伝統的な「お祭り」や「地域フェス」のように、すでに熱量がある場に企業が参入し、地域社会と共創しながら体験価値を盛り上げていく形も、非常に有効で持続的なアプローチになりそうですね。

誰かの「好き」を後押しする「リアルメディア」の構築

――体験を軸としたコミュニケーションは、単なる広告の枠組みにとどまらず、新しい事業やサービスへと発展していくのでしょうか。

杉山:最も美しい構図は、「誰かの強い『好き』」という熱量を体験として実現し、企業がそれを後ろから後押しするスポンサーシップの形です。ファンは自分たちの好きな世界観を真摯にサポートしてくれた企業に対して、深い感謝とブランドエンゲージメントを抱くようになる。小手先の機能訴求がコモディティ化する時代において、この「感謝の循環」を生み出せることこそが、体験マーケティングの最大の強みです。

広屋:広告プロモーションとして始まっても、体験としての完成度やストーリー性が高ければ、有料の興行や独立した事業として自立させることも十分に可能ですよね。もちろん無料体験から有料サービスへ移行する際は、ユーザーとの関係性やコミュニケーション設計をきわめて丁寧に仕掛ける必要があるとは思うのですが。

桑原:商品単体では生み出せないブランドの熱量やコミュニティを育む場所として、体験は不可欠になっています。NEW GREENとしても、従来の広告制作の枠にとどまらず、杉山さんや広屋さんのお二人のようなクリエイターと強固なパートナーシップを組みながら、社会に愛され続ける次世代の体験空間を創造していきたいです。

杉山:いっそのこと、サイバーエージェント自体がイベントスペースやリアルな展示空間(リアルメディア)を保有し、そこにコンテンツを組み上げて企業が協賛していくような、まったく新しいリアルメディアモデルの構築にもぜひ一緒に挑戦したいですね。

    お問い合わせ

    株式会社サイバーエージェント リードクリエイティブセンター「NEW GREEN」

    URL:https://newgreen.tokyo/

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