SNSが人々の生活の中に当たり前に存在するようになった昨今、人々の注意・関心は日々あらゆるコンテンツに争奪されている。それらが経済的に取引される「アテンション・エコノミー」が拡大するなか、広告のあり方や情報空間の健全性が問われている。アテンション・エコノミーが抱える課題とデジタル広告の問題のかかわりについて、慶應義塾大学 大学院法務研究科教授の山本龍彦氏に話を聞いた。
有限なアテンションや時間が数値化し取引されている構造
―「アテンション・エコノミー」という概念は、現代社会においてどのような影響を与えているのでしょうか。
「アテンション・エコノミー」とは、インターネットの発展によって情報過剰な社会が形成され、そのなかで希少価値を持つ人々のアテンション(注意・関心)や消費時間が経済的に取引される仕組みです。私たちはSNSなどを基本的に無料で使用していますが、実際にはその対価として、有限で貴重なアテンションや時間を支払っているのです。つまり、ページビューや滞在時間などを指標として数値化され、プラットフォーム事業者などから広告主に売られています。
この経済モデルの課題として、ユーザーのアテンションを奪うことが経済的利益に直結するため、より刺激的で過激なコンテンツが優位になることを指摘できます。怒りや憎悪といった感情はアテンションを得やすいため、それを煽るようなコンテンツが拡散されやすく、偽情報や誹謗中傷が増加する傾向があります。
また、フィルターバブルやエコーチェンバー現象により、個人が自分の好...