「宣伝会議賞」は、会社の外で学べる場 広告に関わる3人、それぞれの想い

公開日:2025年5月30日

贈賞式から約1カ月経ち、コピーゴールド、ビデオ&オーディオゴールド、そして眞木準賞を受賞した3名で座談会を実施しました。広告制作に関わりのある3名は、「宣伝会議賞」にどのように向き合ってきたのでしょうか。

コピーゴールド
会社員
岩﨑良太さん

ビデオ&オーディオゴールド
会社員
谷口泰星さん

眞木準賞
ことばやさん
長井謙さん

“羽目を外してみよう”とチャレンジするための賞

―自己紹介をお願いします。

岩﨑:主に医療用医薬品領域を扱う広告会社に勤務しています。企画提案やディレクションなどの制作業務全般を担当しているのですが、仕事で一般の方が目にするようなコピーを書く機会はあまりありません。「宣伝会議賞」には大学生の頃に出会って、今回が6回目の応募でした。

谷口:事業会社の広告宣伝部に属し、プロモーションの企画やプロデュース、クリエイティブディレクションなどの業務に携わっています。社会人2年目から自己研鑽の場として「宣伝会議賞」に挑戦し始めて、私も岩﨑さんと同じ6年目です。これまでの挑戦を振り返った時、「宣伝会議賞」は自分のキャリアとともにある賞という印象を持っています。

長井:現在「ことばやさん」という屋号でフリーのコピーライターをしています。大学卒業後は新聞社に勤務していましたが、「宣伝会議賞」での受賞がきっかけとなり、コピーライターとしての活動を始め、結果的に独立しました。最初に応募したのは10年前の第52回。元々CMクリエイターになりたかったので、当時から専門学校に通っていました。その授業で「宣伝会議賞」の課題がたまたま出たんです。そこで初めて応募したら三次まで通過することができ、嬉しくなって、その後も応募を続けてきたという次第です。

―これまでの「宣伝会議賞」との向き合い方を教えてください。

岩﨑:私が「宣伝会議賞」に出会った大学時代は、薬学部に所属していたので、製薬業界に進むか、広告業界に進むか、悩んでいた時期でした。偶然知った「宣伝会議賞」でしたが、言葉だけならチャレンジしやすいかもと思い応募。結果的に初応募で二次審査まで通過し、「この仕事に向いているのかも!?」と思い、ここまできました。

数千本と応募される方もいる中で、私は今回も120本程度の応募でした。応募期間の最初の頃に書き溜めて、一旦時間を置いてブラッシュアップしつつ、最後に投稿します。家の中に籠っているだけでは、なかなかよい言葉が生まれないので、「ポメラ」を持ち歩いて、外出先でも思いついたら書く、ということをしていました。

谷口:私は新卒で事業会社に入社し、元々マーケティング志望でしたが配属されたのはクリエイティブ部門。1年目は仕事に慣れることを優先して、2年目から勉強の場として「宣伝会議賞」に挑戦しました。応募に際して最初に取り組んだのは『SKAT.』を読むこと。こういうものを書けば受賞できるんだ、という空気感を取り込んだうえで、そのときは500本くらい応募しました。運よくシルバーを受賞できたのですが、嬉しい反面、「偶然受賞できた」という感覚が強く、あまり手応えはなかったんです。それ以降、毎年応募したコピーは手元に保管して、昨年書いたものを自分で「これはダメだったな」と思えるようになれば成長しているんだ、という気持ちでやってきました。今年はようやく、自分の実力を発揮して受賞できた、という感覚があります。

長井:「宣伝会議賞」は実務で取り組む広告の仕事とは違って、ギリギリを攻められるところに面白さを感じています。実務ではこんなコピーはクライアントに出せないという表現にもチャレンジできますから。特にコピーライターとして独立してからは、“羽目を外してみよう”とチャレンジするための賞になっていった印象です。

「肉」「おいしい」を使わずに「会計」を軸にした企画の裏側

―お互いに聞いてみたいことはありますか。

谷口:岩﨑さんのコピーの書き方は、矢を射抜くようなイメージを感じました。頭の中で考えている時間が多いのでしょうか?

岩﨑:はい。「これは違うな」「皆考えるだろうな」というコピーは書き出す前に、頭の中で省いていくので、本数を多く出すことが難しくて…。最初から絞り切った中で掘り下げていくので、全体の応募数は少なくなります。考えるフローのほうが楽しいのと、いずれ数千本も書けないのなら質で勝負しよう、と思ったのも理由です。

谷口:本当は渾身の10本を出そう!と思っても、100本まで応募できるという仕組み上、上限ギリギリまで出してしまいます。すごい決断力だなと感じました。

長井:「焼肉のたれ」の課題で、「肉」「たれ」「おいしい」みたいな単語を一切使わずに「お会計」を軸にしたのは、狙ってですか?

岩﨑:オリエンに立ち返ると「おうち焼肉の楽しさやおいしさが広がるようなアイデア」と書かれていて、「焼肉のたれ」を軸に置かなくてもいいのかもしれない、と思ったんです。

長井:“お会計路線”はこの1本だけですか?

岩﨑:そうですね。

谷口:「お会計が既に済んでいるのがお家焼肉です」とか書いてしまいそうです。

岩﨑:「お会計が済んでいる焼肉だとおいしい」とかも思いつきましたが、それだとコピーとして成立しないんじゃないかと思って。

谷口:「発見が新しければ、表現自体はストレートでいい」と言われることもあるので、その判断は難しいですが、そこまで考えぬく必要があるんだと改めて実感します。

長井:谷口さんは事業会社でクリエイティブを担当されていますが、実務と「宣伝会議賞」で書くコピーはやはり違うものですか?

谷口:はい、「宣伝会議賞」は何にも縛られずに書けるのが大きな違いですね。それから私の場合は、課題に関係なく日頃から「世の中にこういう言葉があったらいいのにな」とフレーズをストックしているんです。その発散の場としても、「宣伝会議賞」は機能していました。他の方々もある種、自己表現の場として、楽しんでいるのではないかなと思います。

通過作品が自信作ではないこれって、応募者あるある!?

岩﨑:お二人はたくさん応募されていますが、書いたものから選び取る難しさを感じました。通過した作品が自分では自信のないもの…というのは、あるあるなのでしょうか。

長井:今回含めてファイナリストに6回選ばれたのですが、いつも事務局から連絡がきたときは「本当に自分が出したものか?」と思い出すところから始まりますね…。ただ、「どう見てもハッピーエンド。」だけは好きな応募作品だったので覚えていました。

谷口:選ぶのは本当に難しいですよね。実は前職では協賛企業として審査をしたこともあったのですが、その年のグランプリになったコピーを協賛企業賞として選ぶことはできなかった。企業としてはどうしても、「これを言ってほしかった!」という分かりやすいコピーを選びがちだからです。そこでも、審査員のコピーライターの皆さんと視点を一致させることの難しさを感じました。

―最後に、今後の展望をお願いします。

岩﨑:受賞したことを社内ではあまり言ってなかったのですが、偶然、医薬関係のコピーを提案する機会がありました。業務でも活かしていけたら嬉しいです。ゴールド受賞で「宣伝会議賞」は卒業してしまいますが、今後も趣味の一環として、コピーの公募には参加し続けたいと思っています。

それから、これから参加される皆さんは、SNS等で“宣伝会議賞”と調べると1000本、2000本と応募している人がたくさん出てくると思うのですが…それを見て「自分には縁がない」とか「限られた人しか参加できないんだ」と萎縮しないでほしいなと思います。

谷口:会社の外で学ばせてもらえる場、そしていろいろな方とつながって、その人たちと面白いことを始めるきっかけを与えてくれたのが「宣伝会議賞」でした。少し前に始めたPodcastやnoteなどで発信していきながら、これからもこの賞を楽しんでいけたらと思っています。

今回の受賞は、広告業界の友人はもちろん、会社の上司や先輩たちも知ってくれていて、たくさん嬉しいメッセージをもらいました。この受賞をきっかけに、この先、クリエイティブの世界でどんどん新しいことに挑戦していきたいという野望があるんです。他の人が私のキャリアを振り返ったときに、こんな経歴だったんだ、と思ってもらえるように実績をつくっていきたい。20代は「宣伝会議賞」と共に歩んできました。これから30代、40代と、頑張っていきたいです。

長井:眞木準賞を受賞してから、眞木さんの書籍を読み込んだり、展示会に足を運んだりして、改めてこの賞の重みを感じました。

何年も応募しているとどんどん目標が高くなって、通過本数ばかり気にしてしまいます。でもそもそも一次審査の通過率は1%。これからも常に挑戦者の気持ちを忘れずにいたいです。

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