日本アドバタイザーズ協会(JAA)は2025年4月、「広告の定義」を発表した。2024年9月から活動を開始し、10名の実務家・研究者で構成されるプロジェクトメンバーによる議論を通じて発表されたものだ。本プロジェクトを推進した日本アドバタイザーズ協会の中島聡専務理事に今、「広告」という言葉を定義すべきと考えた理由や背景について話を聞いた。

日本アドバタイザーズ
協会(JAA)
専務理事
中島 聡氏
嫌われ者になっている危機感広告はどこに向かう?
私は2年前にJAAの専務理事に就任しましたが、そこで気づいたのが「広告」という言葉の定義がないことです。小林太三郎先生が残された素晴らしい広告の定義もありましたが、メディア環境が激変している中で、定義の刷新が必要ではないか、と。
加えて、私のマーケティングの恩師である村田昭治先生の言葉も定義策定の後押しになりました。先生はよく「マーケティングはエクスターナルな部分が脚光を集めがちだが、インターナルな部分も大事である」と話されていました。私たち、アドバタイザーはじめ広告に携わる人たちが、改めて広告という言葉の認識を共有することは、広告という存在のインターナルのコミュニケーションにもつながると考えたのです。
確かに、広告の定義は全く存在していないわけではなく、広告会社などの企業や研究者の方たちが設定した定義はありました。しかし、ややもすると手段としての広告の説明に終始している印象で、広告が社会に存在する意義や目的が定義されていないのではないか、と感じました。
おりしも、広告をはじめとするデジタル空間の情報の健全性が問題視されている環境でもあり、広告という存在そのものに対する社会的な...