生成AIの台頭により、業務の効率化が実現するとともに、メディアの在り方や、企業と人の接点の作り方をも変えるような大きなインパクトが予測されます。マーケターは、これらの技術をどのように受け入れ、業務に活かしていけばいいのでしょうか。22回目となる今回は、マーケティングパラダイムシフトについて、富士通の山根宏彰氏が解説します。
デジタルネイチャー時代のマーケティングパラダイムシフト
2025年4月に実施されたトランプ政権による大規模関税措置は、世界経済に激震をもたらしている。「アメリカファースト政策」は、グローバルサプライチェーンを根底から揺るがした。株価は暴落と暴騰を繰り返し、先が見えない不透明感が漂ってきている。このように、経済は世界のあり方に重要な役割を果たし続けてきた。
そもそも歴史を振り返ると、これまで世界を秩序付けてきたのは、経済的権力、宗教的権威、そして軍事力という3つの支配構造だ。しかしIT化、さらにAIが普遍的に導入された世界の登場により、既存の秩序がどのように変化するのかを再考すべき時代を迎えている。
今回は、今までと見方を変えてマクロ的に、マーケティングとAIを考えてみたい。
権力構造のメカニズムと技術による変容
そもそも、これまでの権力構造はどのように成り立ってきたのか。宗教的権威は真実や倫理の独占、経済的権威は資源の希少性や貨幣価値、軍事力は暴力の独占によって人々を支配してきた。いずれも人間社会の本質的な制約(情報不足、資源不足、肉体的安全の脅威)に由来する。
しかし、これらの「制約」を根本から揺るがしかねないのが、ITとAIの浸透だ。情報の普及とAIの精緻な...