私たちの生活の基盤をつくっているともいえる、不動産ディベロッパー産業は、複数の顧客接点を持ち、その接点から各種行動データの取得も可能だ。近年、不動産ディベロッパー事業者によるデータ利活用に基づく、事業のトランスフォーメーションを目指す動きが顕著になっている。サッポロビールでデータ利活用を推進し、直近では「ヱビスブランド」のファンコミュニティ「ヱビスビアタウン」を手掛けたのち、現在はサッポロ不動産開発に出向し、不動産ディベロッパー業界のDXに取り組む福吉敬氏がホストとなり、企業内でデータ利活用を推進するマーケターと対談する本連載。今回は東急不動産ホールディングスの100%子会社でDX推進を担うTFHD digitalの武重慶士氏と対談。幅広い事業を展開する東急不動産ホールディングスグループのDXを推進し、境界を取り除いた新しいライフスタイルの創造をミッションに掲げる組織を別会社化した狙いと理由を聞く。
※本記事は宣伝会議運営「アドタイ」に掲載の記事を転載したものです。

写真左から、TFHD digital 上席執行役員 プリンシパル 武重慶士氏、サッポロ不動産 経営企画部DX推進グループ 福吉敬氏。
DX推進を実現する人材 いかに育成し、評価する?
福吉:僕がサッポロビールからサッポロ不動産開発へ出向して感じたのは、お酒もそうなのですが、不動産も同じかそれ以上に古い業界で、マーケティングのデジタライゼーションとは縁遠いということでした。
東急さんは鉄道やバスに商業施設、さらに住宅の事業も抱えていますよね。それらを総合的に管理・運営していくためには間違いなくデータと向き合ったマーケティングが必要だと思うのですが、業界内で先駆けてそれを実行されている印象を持っています。
武重:実際にグループ全体で完璧に連携を取れているかと問われたら、まだ道半ばではあると思います。鉄道事業を中心とする「赤色のロゴの東急」と、我々が所属している「緑色のロゴの東急不動産ホールディングス」は、共に東急という大きな冠の中に属してはいるものの、独立性が高い。それでも、将来的にはデータを連携し活用することでグループシナジーを最大限発揮できると考えています。
当社の場合、一般的な不動産企業と少し違いがあることが奏功しているかもしれません。具体的には事業ウイングが少し広くてto Bだけではなくto Cの事業もある点が他社との違いかな、と。
例えば、東急不動産内にはウェルネス事業ユニットという組織が存在するのですが、そこではホテルやゴルフ場、スキー場やリゾート施設や会員制ホテルを運営しています。他の不動産企業はBtoBtoCのビジネスモデルが一般的かと思いますが、直接顧客やユーザーに対してサービス提供しているからこそ得られるデータがあり、それをマーケティング活動に生かすことで、さらなる価値をいかに提供できるかということに...