巨大プラットフォーム事業者が世界的に躍進を続ける中、各国では自由な市場競争を阻まないよう留意しつつ、プラットフォーム事業者に対する規制が始まっている。日本においては2020年5月に「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」が成立し、2022年8月1日からは本法に「デジタル広告分野」が加わった。本法ではデジタルプラットフォームのうち、特に取引の透明性・公正性を高める必要性の高いプラットフォームを提供する事業者が「特定デジタルプラットフォーム提供者」として指定され、規律の対象となる。デジタル広告分野では、2022年10月にGoogle、Meta、LINEヤフーの3社が指定された。2025年2月には、2回目となる「経済産業大臣評価」が公表された。ここでは、本法を担当する経済産業省商務情報政策局情報経済課デジタル取引環境整備室の長島由晃氏が今回の大臣評価のポイントや、評価から見えてきた課題について解説する。
経済産業省は、2025年2月14日、デジタルプラットフォーム取引透明化法(以下、「透明化法」)に基づく2024年度の経済産業大臣評価を公表しました。本評価は、デジタル広告市場におけるデジタルプラットフォームを巡る取引環境の現状と課題を挙げ、広告取引における課題の解決やデジタル広告市場の健全化を目指すものです。本稿では、評価の一部を解説していきます。
透明化法は、デジタルプラットフォームを巡る諸課題のうち、デジタルプラットフォーム提供者とその利用事業者との間の取引関係の課題に対応するために2021年2月より施行された法律であり、経済産業大臣の指定を受けた特定デジタルプラットフォーム提供者(以下、「指定事業者」)に、デジタルプラットフォームの提供条件を開示することや利用事業者との相互理解を促進するための体制整備を求めるものです(※1)。法の規定に基づき、毎年度、指定事業者が取組みの状況やその自己評価を記載した報告書を提出し、それを受けて、ステークホルダーの意見等も踏まえつつ、経済産業大臣が特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性についての評価(以下、「大臣評価」)を行うことになっています。
※1 現時点では、総合物販オンラインモール、アプリストア、デジタル広告の3分野が透明化法の対象となっており(各分野の指定事業者はそれぞれ、3社、2社、3社。)、オンラインモール分野及びアプリストア分野については2022年度、2023年度に続き3回目、デジタル広告分野については2023年度に続き2回目の大臣評価となる。
2025年2月に公表 大臣評価における論点とは?
大臣評価の論点は、立法当時(デジタル広告分野追加時)に行われた内閣府のデジタル広告分野における市場調査による論点を引き継いでいます。
大別すると、①提供条件等の開示に関する論点と②利用事業者との相互理解促進に関する論点の大きく2つに分類されます。
①提供条件等の開示に関する主な論点には、広告・広告枠審査基準など、広告取引における提供条件の開示に関する事項や、提供条件の変更時における事前通知などがあります。②利用事業者との相互理解促進に関する主な論点には、広告の事前審査や広告配信停止措置等に対する苦情への対応、自社優遇・利益相反への対応などのための体制整備に関する論点や、アドフラウド、ブランドセーフティ、ビューアビリティなど、いわゆる「広告の質」と呼ばれる課題に関する論点、パーソナルデータ、オーディエンスデータの取...