多元アイデンティティのミラーボール

公開日:2022年6月29日

  • 遠藤 薫氏(学習院大学)

マッシュアップする世界とアクターネットワーク理論

サントリー「ほろよい」のCMがなんとも心に引っかかる。

「ほろよい飲んで、なにしよう?」をテーマにしたCM第1弾は今年の2月にオンエア。アニメ版と実写版があり、どちらもよいが、私はことにHAIさんによるアニメ版にふわふわする。女性がほろよいでくつろぐ、パステルトーンの、新しいような懐かしいような不思議な世界観。部屋の様子も女性の髪型や服装も、窓から見える街の風景も、季節も時間も、同居猫/犬も、次々変わる。現実を超えて、自由に自分時間を楽しむ心地よさが表現されている。

その心地よさを増幅するのが楽曲だ。複数の楽曲からボーカルトラックや伴奏トラックを切り出し、それらを重ね合わせてひとつの楽曲をつくり出す音楽の手法を「マッシュアップ」という。

このCMでは、『今夜はブギーバック(nice vocal)』(小沢健二)と『水星feat.オノマトペ大臣』(tofubeats)をマッシュアップしている。『ブギーバック』はスチャダラパーとのコラボ曲で1994年にリリース、ラッパーのオノマトペ大臣がフィーチャリングした『水星』は2012年発売。2つの楽曲はそもそも空気感が似ているのだが、時代の違いがニュアンスの揺らぎを感じさせる。それらを今回は、kZm×佐藤千亜妃、池田智子×TENDREの2組が...

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