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各分野のプロが考える 伝わる「言葉」の本質

言葉の面白さに気づいた瞬間は、今でも明確に覚えている

  • いしわたり淳治氏

「言葉」で想いを伝える手段はさまざまだ。中でも、歌詞の中に登場する「言葉」に共感し、心を動かされた経験がある人は少なくないだろう。「なぜあの歌詞は心に響いたのか」。作詞家のいしわたり淳治氏が、自身の印象に残った歌詞フレーズを用いながら、歌詞における「言葉」の役割について語った。

作詞家
いしわたり淳治氏

1977年生まれ。青森県出身。作詞家、音楽プロデューサー、作家。1997年にロックバンドSUPERCARのメンバーとしてデビューし、オリジナルアルバム7枚、シングル15枚を発表。そのすべての作詞を担当する。2005年のバンド解散後は作詞家として、Superfly『愛をこめて花束を』他、SMAP、関ジャニ∞、矢沢永吉、布袋寅泰、JUJU、中島美嘉など。音楽プロデューサーとして、チャットモンチー、flumpoolなどジャンルを問わず数多くのアーティストを手掛ける。現在までに700曲以上の楽曲制作に携わり、数々の映画、ドラマ、アニメの主題歌も制作。音楽活動のかたわら、映画・音楽雑誌等での執筆活動も行う。

成り行きで始まった作詞家人生 書くことにこだわりはなかった

僕は学生時代からバンドを組んで音楽活動をしていて、その頃からずっと作詞を担当していました。でも、「絶対に作詞をしたい!」と思っていたわけではありません。メンバーで話し合った結果、成り行きで担当になったというだけなんですよね。なので最初は、特に書くことが好きだったわけでもありませんでした。そんな僕が、言葉の面白さに気づいた瞬間は、今でも明確に覚えています。

僕は理系の高専に通っていたのですが、ある日先輩と一緒にビーカーを洗っていたときのこと。先輩に「このビーカー、どうやって洗えばいいですか?」と質問すると、先輩は、「楽しく洗えばいい」と答えたのです。

僕は洗う「方法」を聞いたのに、先輩は洗う上での「心構え」のような部分について回答した。あのとき先輩は冗談でそう言ったのかもしれないですけど、この体験があって「言葉」や、「表現」の面白さに気づいたんです。同じ言葉でも、受け取る人が違えば意味も変わるんだな、と実感した出来事でしたね。

歌詞における言葉の「描写」は3種類存在する

広告コピーでは映像が浮かぶ言葉がいいと言われたりしますが、歌詞の場合は必ずしもそうとは言えません。僕は言葉による描写には「映像をもつ描写」「もたない描写」「映像がありそうでない描写」の3種類あると思っています。例えば、「失恋して寂しい」という感情を歌詞(言葉)で表現するとしましょう。

映像をもつ描写では、「君とのやりとりがないから携帯の充電の減りが遅いよ」というような。聞くと、その具体的な映像と悲しいという感情が浮かんでくる言葉です。

一方で、映像をもたない描写は、「どうして君はいないの」という感じの歌詞。寂しい気持ちは想像できますが、聞く人に共通した具体的な映像は浮かび上がって...

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各分野のプロが考える 伝わる「言葉」の本質

広告がその目的を達するためには、そこにある言葉がまず対象者にしっかりと「伝わる」ことが大切です。しかし、情報過多の現在において、伝える意思があるにもかかわらず、伝わらないままに終わってしまう言葉も増えてきています。加えて価値観が多様化した現代、ときにその違いが人と人との間に分断を生み出してしまうことすらあります。同じ言葉を使っていても、その言葉を受け取る側と同じ文脈を共有していなければ、伝わらないばかりか、摩擦を生んでしまうことにもなりかねない。広告の言葉も同様で、大きな力と同時にリスクもはらんでいるのが現在の状況です。本特集では、広告業界だけでなく多様な領域で、伝わる言葉の哲学をもって仕事に取り組む方々に取材。価値観多様時代の言葉の在り方、使い方を考えていきます。