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THE FIRST TAKEのアウラ

  • 遠藤 薫氏(学習院大学)

「ただ一度だけ」が引き出す情動 そぎ落とされた先にある美しさ

昨年から今年にかけて大きな話題になったのが、YouTubeチャンネルの「THE FIRST TAKE」である。白一色のスタジオに、アーティストが現れ、マイクに向かう。ごまかしのきかない状況での一発撮りだから、緊張感が痛いほど伝わってくる。ひと呼吸して、そして歌い出す。

それは引き算の美学である。メディア技術が高度に発達した現代、通常ならさまざまな演出や、照明や、舞台背景や、バックダンサー、カメラワークなどによって作品の訴求力を高める要素が付加される。総合芸術ともいえるパフォーマンスは、聴くものを圧倒し、感動へと導く。

それに対して「THE FIRST TAKE」は、ありとあらゆる装飾をはぎとった「人間が歌うということ」の極北を、黙って映し出す。彼ら/彼女らには歌うべき思いがあり、しかし、それが現実に「うた」という形をとり得るものなのか、とまどいながらも、ある瞬間、「お願いします」との言葉とともに決然と歌い出す。

彼ら/彼女らはとてもひとりぼっちに見える。カメラのアングルはマイクに向かうアーティストの横顔にほとんど固定されている。多くのアーティストは伏し目がちに歌う。通常であれば視線の先にいるはずの観客が。彼ら/彼女らはとても無防備に...

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