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アイデアでコロナ鎖国を乗り越える!

インバウンド回帰を見据え 将来に向けた『自分磨き』を行う

  • 吉田淳一氏(ジャパンショッピングツーリズム協会)

海外からの入国制限は、国内の産業に大きな打撃を与えている。その中でも、訪日外国人をはじめとする観光客をターゲットに商品・サービスを提供していた地域の企業は、どのような対策を取っているのだろうか。インバウンド施策をプロモーションし、地域の小売事業者を支援するジャパンショッピングツーリズム協会(JSTO)で理事を務める吉田淳一氏が解説する。

    Point

  • コロナ後のインバウンド回帰に備えた“自分磨き”。
  • 地元の人と旅行客の関係をより中長期的なものにする。
  • インバウンド施策≒自国文化を磨き・継承するための施策。

インバウンド回帰を見据え“自分磨き”を行う時期

私は観光庁の「ビジットジャパン+」のメンバーとして、“インバウンド”という言葉がまだ世の中で使われていない時代から、インバウンド事業を日本として盛り上げていく活動に携わってきました。そして、その経験をきっかけに、各省庁がインバウンドのためのインフラづくりを行うサポートや、訪日外国人を個人商店が受け入れる際のポイントを伝えるアドバイザーといった活動を実施。現在は、インバウンド事業に限らず、地方創生のための観光全般のお手伝いをしています。

今回は、訪日外国人のみならず、国内での人の移動もままならない状況下で生まれた、観光業などを営む地域の企業・自治体の新たな活動について紹介し、今後も地域の発展を持続するために必要な意識について、私の考えをお伝えできればと思います。

中国の書『易経』には観光とは「国の光を観る」ことであると記述されています。ここでいう「光」とは何なのか。私は「その土地独自の文化」、すなわち「その土地に行かなければ味わえない、見られない、楽しめない」という、地域のコアコンピタンスのことであると考えます。

インバウンド消費が見込めない現状で、訪日外国人に対して商品・サービスを提供していた大手の企業に見られている傾向のひとつが、このコアコンピタンスを高めること、言い換えれば“自分磨き”(自社の商品・サービスの質の向上)です。

具体的に何をしているのかと言えば、ターゲットを訪日外国人から日本人に転換したのです。日本人は商品に対して厳しい目を持ち、目利き力が高いと言われています。日本人に対して、“自分磨き”をした質の高いものを提供し続けていれば、インバウンドが回帰した際にも対応ができるという考えです。

このコロナ禍を“自分磨き”の期間と捉えているのは、大手企業だけではありません。地域で特産品などを扱っている企業にも、この期間を将来に向けた準備期間として活用している企業が見られます。

そのひとつが北海道の小樽市にある老舗の酒蔵「田中酒造」です(事例1)。

日本酒は製造されてから年を置かずに飲むのが一般的。しかしワインやウイスキーなどは熟成し年数が経つほどに価値が高まります。田中酒造では、このワインやウイスキーの考えをもとに、コロナ禍においてビンテージ(熟成)日本酒の仕込みを始めました。この先、インバウンド消費や人の移動が回復した時を見据えての仕込みは、いまの時期だから行える“自分磨き”と言えるでしょう。

    事例1 田中酒造


    北海道小樽市で日本酒「宝川」ブランドの製造を行う1899年創業の老舗蔵元「田中酒造」は、コロナ禍での旅行客の減少によって在庫となっていた日本酒の材料である酒米を活用し、3~5年寝かせて市場に投入するビンテージの日本酒の仕込みを開始した。

    同社は2019年にビンテージ日本酒を試作。旅行客からも好評で、ノウハウとして蓄積をしていた。そして北海道内で全体的に、土産品などでの観光客の消費が低下している現在の状況で、ほかの蔵元と従来の日本酒で戦うのではなく、そのノウハウを活用し独自の商品で差別化を図ることに。また、いずれ国内・海外ともに人の移動が可能となった将来を考慮し、企業として持続的に進化するためにも、ビンテージの日本酒の仕込みは有効だと考えられる。

地域が一丸となり県産品を県外・海外へ発信

コロナ禍で人の移動は叶わなくても、物の移動は可能です。地域の特産品を、県外や海外に向けて発信している事例も紹介します。

山口銀行が山口県との共同構想をもとに設立した「地域商社やまぐち」は、魅力ある県産品をまとめて首都圏をはじめとした県内外へ発信する地域商社。そしてこのコロナ禍では、自分たちが持つネットワークを通じて、中国を中心に越境ECプラットフォームへ県産品を出品し、販売しています。自分たちだけでは輸出ができない県内の個人商店などの商品をまとめて販売することでサポートし、これによって企業・商店の売上が上がり、事業を拡大することになった暁には、設備投資のための融資を山口銀行で行うというサイクルを生み出しているのです。

旅行客の減少により売上が厳しい県内の企業・商店に対し、単に銀行として融資をするのではなく、商社として売上を向上させるサポートをしたのちに事業拡大のために融資を行うという方法で、地域の活性化に...

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アイデアでコロナ鎖国を乗り越える!

近年のインバウンド需要の高まりに加え、2020年には東京2020大会で国外から多くの観光客が来訪する予定だった日本。しかしコロナ禍における外国人観光客の流入数は当然ながら4月以降、前年同期比99.9%減といった状況も見られました。観光産業をはじめ、国内の需要喚起を目指す動きはあるものの、人の往来がほぼ皆無になっている状況下、かつてのインバウンド需要で実現していた売上には程遠いのが現状。日本国内における需要の喚起、あるいは物理的な人の往来がなくなったいまだからこその、オンラインを活用した越境ECなどといった新しい売上はつくれないのでしょうか。大手企業から中小店舗まで、インバウンド需要に期待ができない中での市場開拓方法を考えます。