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消費者理解とブランドの存在意義で成り立つ 組織でつくるブランドマネジメント

公開日:2021年1月12日

  • 黒木昭彦氏(ジョンソン・エンド・ジョンソン)

コロナ禍におけるマスク着用時に気になる口臭問題をとらえ、関西人のインサイトに基づいた「リステリン」のCMを展開するなど、その時々の消費者ニーズに合わせた提案をしているジョンソン・エンド・ジョンソン。臨機応変なコミュニケーション施策の背後には、2020年2月に代表取締役プレジデントに就任した黒木昭彦氏の手腕がある。徹底した消費者目線で顧客のインサイトをとらえ、ブランド価値を提供していくにはどうすればよいのか。黒木氏に話を聞いた。

エンジニアとして入社したIBMでマーケティングに開眼

僕のキャリアは実はマーケティングからではなく、1990年に日本IBMに入社しエンジニアとしてスタートしました。当時は「ThinkPad」の開発グループに所属していましたが、消費者向けの製品をどう売っていくか、マーケティング的な活動にも興味を持ち、営業トップに「ThinkPad」を売らせてほしいと直訴した結果、秋葉原の量販店の店頭に立たせてもらいました。この経験がブランドの価値を消費者に理解してもらい、そして真に価値あるものを提供して喜んでいただけることの楽しさに気づくきっかけとなったのです。

日本IBM時代、僕たちの「ThinkPad」開発チームでは新たなデバイスを開発していました。今でこそ浸透した音声認識も備わっていたのですが、当時はテクノロジー的には早すぎた。機能が優れているかどうかよりも、その時々に消費者が望んでいる価値を提案しなくてはいけないのだという気づきになりました。

つまり、時代が変化する中で、特にマーケティングやビジネスにおいては、消費者のニーズを肌感、直観、データ等さまざまな視点でとらえながら、それに合わせてうまくコミュニケーションを構築しサービスを提供していかなければ、消費者にとってはまったく意味のないものとなってしまうということです。

消費者と自ブランド 2つの“理解”が求められる

しかし、消費者のニーズを把握するのは容易なことではありません。消費者の深層心理、つまりインサイトは、消費者自身でもそれを言い表すことは難しいからです。

加えて、マーケティングの仕事は消費者を深く理解するだけでは成り立ちません。消費者だけでなく、自分たちの製品のことも理解していなければ、適切な価値の伝え方は考えられないからです。なぜそのブランドが社会に存在しているのかというブランドの存在意義から始まり、代替品、競合品と比べて何が特別と言えるのか。「このブランドでなければならない理由」を事実ベースで把握する必要があります。

消費者、そしてブランドの2つの理解を深めた上で、どういうアイデア、コンセプトで売っていくか、つまりはWHATの部分を考える必要がありますが、昨今のマーケティングは消費者理解とブランドの存在意義、つまりはWHYの議論も十分でないまま、WHATも飛び越して、いきなり手法論のHOWの話になりがちな傾向を感じます。しかし、これでは本末転倒です。

消費者、そしてブランドの双方に対する深い理解に基づくキャンペーンの成功事例といえば、Appleの「Think Different」があるでしょう。あのキャンペーンはまさに、自分たちのブランド、製品のコア、存在意義など、自分たちの価値観を理解しているからこそできたキャンペーンです。

故・スティーブ・ジョブズ氏は、消費者に対するリサーチから読み取れる情報だけでなく、消費者が本当は自分がどうありたいのか、どうなりたいのかまで理解していたから、今までに世にないものをどんどん生み出すことができたのだと思います。彼はかつて講演の中で「世の中も変わっている、Appleを創業した時からすべて変わっている。製品も、売り場もすべて変わっている。でも唯一変わっていないのは、Appleのコアのバリューだ」と。

デジタルの時代は社会環境も消費者ニーズも、目まぐるしく変わります。それに合わせて...

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マーケティング・コミュニケーション活動における手法やメディアだけでなく、マーケティング活動においても、施策が複雑になればなるほど、事業会社側の組織も、またそれに相対するパートナー企業の組織や人材も専門特化し、細分化していく傾向にあります。しかし高い専門性を求められながらも、企業におけるマーケティング活動の全体像を把握しなければ、個々の専門性を発揮して成果につなげるのは難しいもの。それでは2021年に「マーケティング」という言葉を考える時、その全体像をどのように理解・把握すればよいのでしょうか? マーケティング、マーケティング・コミュニケーションを俯瞰の視座で捉える最前線の実務家・研究者の考えを聞きます。