
(左)1911 (右)2018
深い青色の丸い缶に入った、真っ白なスキンケアクリーム。缶に書かれたブランド名を見なくとも、その色・形を見るだけで「ニベアクリーム」を想起できる人が多いのではないだろうか。
ニベアクリームが誕生したのは1911年、ドイツのハンブルク。医薬品への応用を目指して研究が進められていた素材が、スキンクリームの基材になることに気づいた薬学者らによって生み出された。ニベアの名は、「nix(雪)」「nivis(雪の)」というラテン語に由来する。
「誰でも、どこでも、家族みんなで使える」というコンセプトはもちろん、クリームの処方も、発売から現在に至るまでほとんど変わっていない。現在は200カ国・4億3000万人以上に愛用されている。
「誰にでも買える価格で、高品質の製品を」という開発者の志は、容器にも表れている。入手しやすく、保存性に優れ、持ち運びやすい―こうした条件に照らして缶が採用され、受け継がれているのだ。デザインは、発売当時こそ、黄色い缶に緑色のアールヌーボー風のつる草模様があしらわれていたが、ブランドの誠実さや信頼感、親しみやすさを表現する色として1925年に青色が採用された。以降、大きな変更はほとんど行われていない。
日本では1968年、世界80番目の国として販売を開始。2018年で発売50周年を迎える。「スキンケア」自体、人々にとって馴染みが薄かった当時の日本で、「老若男女が使える、健康な肌を保つための保湿クリーム」として、いち早くそのポジションを築いた。
「優れた保湿効果という機能的価値はもちろん、スキンケアを通して『家族や大切な人を護る』という情緒的価値を訴求し続けてきたことが、ニベアブランドの特別な立ち位置を確かなものにしたと考えています。外見、香り、肌触りといった五感を通じて、『お母さんに塗ってもらった』という子どもの頃の思い出とともにブランドが想起され、3世代で愛用いただいています」と、マーケティンググループ シニアマーケターの雨宮綾子氏は話す。
「先人が確立してきたものを守り続ける」ことこそが、ニベアブランドの差別化戦略と言えそうだ。
ニベアブランドに携わる人の間では、「ニベアらしさ」を指す"ニベアネス"が共通言語として浸透しているという。そして、商品開発であれコミュニケーションであれ、ブランドに関わるすべての活動は、徹底してニベアネスの体現・強化を目的に企画・実行されている。
視点01 ブランド戦略
幼少期にブランドの「原体験」をつくる
ニベアブランドは、主力商品である「ニベアクリーム」を核に、ボディ、ボディウォッシュ、サン、リップ、洗顔料、ニベアメンと、サブカテゴリーを展開している。その中で、「人生で初めて出会うニベアブランドは、ニベアクリームであってほしいと考えています」とシニアマーケターの雨宮氏 …