
ハコスコのオフィスには、これまでに制作された、VRゴーグル「ハコスコ」の一部が展示されている。デザイン性の高さも人気の秘密だ。
脳科学の研究過程で開発した技術を応用
近年、注目を浴びるVRだが、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)が高額なことが普及のハードルとなっていた。「もっと手軽に、いつでもどこでもみんなにVR体験をしてもらいたい」とハコスコでは2014年5月に段ボール製のゴーグルにスマートフォンを装着するVRゴーグル「ハコスコ」をリリース。スマートフォン用アプリを開発し、VRゴーグル、アプリ、コンテンツの制作および配信を「スマホVRサービス」としてワンストップで提供している。
社名とVRゴーグル両方につけられているハコスコという名前は段ボールの「ハコ」と「スコープ」に由来する。レンズをつけた箱型の段ボールに、手持ちのスマートフォンを装着する仕組みで、1200円から購入可能。段ボールにオリジナルプリントを施せるので企業のプロモーションとしても注目、活用されている。
ハコスコの創業は2014年7月。代表取締役の藤井直敬氏は理化学研究所の脳科学者で、人間が他者といる時と一人でいる時に生じる振る舞いの違い、その切り替わりが起きる仕組み解明するなど、「人の社会性の研究」を専門にしてきた。「もともとはサルを使った研究をしていた。
サルの場合、思ったことをすぐに行動に出すのでわかりやすいが同じことを人でやろうとしたら、人はちょっとしたことで振る舞いが切り替わってしまうことが分かった。すべての被験者に同じ状況を繰り返し再現することが可能な現実をつくるにはどうしたらいいか」と悩んだ末に出来上がったのが、代替現実=SR(Substitutional Reality)という技術だった。
「SR技術を使うと目の前にいる人が本当に実在しているのか、それとも映像なのか区別が難しくなる。あらかじめ記録しておいた過去の映像を目の前にいるかのように再生するので、少なくとも本人はそれが実像なのか、映像なのか区別がつかない」。
この技術を何かに応用できないかと数年模索し続けたところ、SR技術のコアな部分をスマートフォンで代用し、段ボール製のゴーグルでヘッドマウントディスプレイをつくる「ハコスコ」の着想を得た …