特定の商品の短期的な売上増には直結しにくいといえる企業広告。しかし継続して打ち出すことには明確な意義があると語るのは、龍角散の藤井隆太社長です。広告の力をうまく活用しながら、同社が築いてきた独自のポジションとは。
- 自社のルーツを明らかにすることで、目先の利益に捉われず「健康寿命の延伸」に寄与することを目指す企業のあり方を伝える。
- 「どんな企業がどんな思いでつくっているのか」に対する消費者の関心に応えることで、結果的に商品が売れる。
龍角散が考える、企業広告の意義・効果
創業当時の思想が経営方針にも影響

龍角散ののどすっきり飴「花を見ればわかる」篇
製薬会社・龍角散の歴史は、江戸時代中期に遡る。秋田藩の典医であった藤井玄淵が、藩主の持病の喘息を治すために製造した藩薬が、同社の主力商品であるのど薬「龍角散」のルーツだ。元々ビジネスを目的とせず、人の健康を願ってつくられたという思想は、今でも同社の経営方針に強く反映されている。
「健康に暮らしたい、というのは人間の基本的欲求ですから、見方によっては、健康産業は利益を生み出しやすいと言えるかもしれません。しかし、龍角散が目指すのは、ただ医薬品を売ることではなく、健康を維持・増進するための方法を消費者に知ってもらい、実践してもらうこと。つまり、『セルフメディケーション』の普及啓発です」と藤井氏。「CS(顧客満足)よりもCE(顧客教育)」を掲げ、どうやったら健康で長生きできるのかを知り実践してもらうことに、健康産業の存在意義があると強調する。
その考えは、同社の広告にも表れている。人々に、「健康寿命の延伸」を実現するための新しい気づきを与えることを主眼に置き、テレビCMを中心とした広告を展開し続けてきた。
例えば、1998年に同社が世界で初めて発売した服薬ゼリー「らくらく服薬ゼリー」のCM。錠剤やカプセルなどの固形物を一緒に飲み込むと、のどにストレスがかかるという気づきを与え ...