2016年に日本上陸から20周年を迎えた「ZIMA(ジーマ)」。若者をメインターゲットに据え、時代と共に目まぐるしく変化する若者文化に寄り添ったコミュニケーションを展開しつづけてきた戦略に迫る。

(左)1996 (右)2016
若者のカルチャーに寄り添うブランドを構築
ロシア語で「冬」という意味を持つ「ZIMA」が日本に上陸したのは、今から20年前の1996年のこと。1年間のテスト販売を経て、1997年に本格的に販売を開始した。当時の日本には、瓶のふたを開けてすぐ飲めるRTD(Ready To Drink)のアルコール飲料は、ビールや日本酒などしかなかった。瓶に入った透明なZIMAは、“透明なビール”と呼ばれ、瓶の口にライムやレモンを挿して飲む独特なスタイルが評判となり、若者の間で浸透していった。
ZIMAは1993年に米国で誕生。当時、米国では“Clear Craze”と呼ばれるクリアブームが起きており、スケルトンのPCなど、透明で革新的なデザインを施したプロダクトが人気を呼んでいた。そうした背景のもと、ZIMAは、ビールでもワインでもハードリカーでもない、まったく新しいアルコール飲料として生まれた。
モルソン・クアーズ・ジャパンは、カテゴリーのない商品であるZIMAを日本国内でどのように売り込んでいったのか。ZIMAのブランド・マネージャー、ビンセント・ニコル氏は「ブランドを立ち上げる資金や人材といったリソースが不足している上に、日本でのZIMAのブランド認知はゼロ。モルソン・クアーズ自体の認知も低い。こうした条件は弱みではありますが、捉えようによっては強みにもなるのです」と語る。ZIMAがとったコミュニケーション戦略は、驚きを仕掛けるゲリラマーケティングだった。そうしてZIMAはジャンルも味も謎に包まれた“ミステリアスな飲み物”として認知されるようになった。
ZIMAのターゲットは20代のアーリーアダプター。クラブやカラオケ、飲食店など、若者が集う店舗を媒体にして接点をつくった。新しい飲み方の体験や、クラブのカウンターを飾るZIMAのネオンサイン、瓶を置くと光を放つフラッシングコースターなどのグッズで驚きを与え、仲間と楽しむ場を盛り上げてきた。
「ZIMAは味の特徴やパッケージのリニューアルでコミュニケーションをするというよりも …