アメリカPR協会(PRSA)と日本パブリックリレーションズ協会(PRSJ)はともに、PR業の業界団体としてPRの啓発・普及に努めている。この度、PRSAのレイ・デイ会長が来日。PRSJの山口恭正理事長と対談した。
1.PRは人間同士の関係
─AIやデータの活用が進む中で、PRにおける「人間ならではの役割」とは何でしょうか。
レイ・デイ氏(以下、デイ):コミュニケーション業界において、「我々はAIの台頭を恐れるべきか」とよく聞かれます。その答えは、「今後成功するのは、AIを恐れる人間ではなく、うまく取り入れることができる人間だろう」ということです。コミュニケーションや技術の歴史からは、技術の進展に関するひとつの数式、すなわち「人間+機械=より良い世界」を導き出すことができます。「まず人間、そして機械」という順番が担保できれば、この数式は常に成り立ちます。過去を振り返ってみても、コンピューターの登場やインターネットの台頭も、この「まず人間」が根底にありました。AIについても同じことが言えるでしょう。「PR」の「R」はRelations(関係)ですが、関係は人と人との間のものであって、機械と機械の間のものではありません。
山口恭正氏(以下、山口):今後、AIがさらに発達しても、人間の役割がなくなることはないはずです。というのも、AIは正解を出したり完成度を高めたりすることには長けているかもしれませんが、人間は失敗や不完全さを楽しめる存在だからです。問いを立てたり、課題を設定したりする能力はこうした不完全さの中から生まれてくるため、その点においては人間の側にイニシアティブがあります。
─PRSAはどのような状況にありますか。
デイ:我々にとって、「変化のスピード」が最大のリスクであり機会でもあると思っています。そしてそれは、PR業界全体にかかわるグローバルな問題であり、「我々のスキルは日々古くなるため、今まで以上にリスキリングやアップスキリングが重要になる」ということでもあります。例えばAI...

