新聞や雑誌などのメディアに頻出する企業や商品リリースについて、PRコンサルタントの井上岳久が配信元企業に直接取材。背景にある広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウを、じっくり分析・解説します。
「世界初」は長く活用できる
称号のひとつ。根拠を示せば
信頼性が大きくアップ!
エレコムの製品は、皆さんも外付けハードディスクなど何かしら愛用しているのではないかと思います。
そのエレコムが2025年3月に発売したのが「世界初のナトリウムイオン電池を使ったモバイルバッテリー」。なかなか「世界初」と銘打ったリリースにはお目にかかれないので、ぜひ取り上げたいと思いました。
エレコムは2010年からモバイルバッテリーを販売し、2025年まで11年連続で国内販売台数No.1を獲得。従来のモバイルバッテリーに使用しているレアメタルは、採掘の際の安全や環境汚染が社会問題となっています。業界を牽引するエレコムでは、数年前からこの問題を解決する製品を模索し、今回の製品に至りました。
「環境対策はもちろんですが、当時からバッテリーの発火事故が問題になり始めていたことも開発の理由です」と話すのは同社コミュニケーション課広報チームの砂子田みゆきさん。今年の夏はハンディファンの発火事故がニュースでも取り上げられましたが、数年前からすでに問題になっていたのです。
「世界初」の根拠を調査
広報チームに本製品の話が届いたのは2024年の9月頃。開発担当者からは「恐らく世界初の商品だと思うので、その調査も含めて広報してほしい」と相談されました。「世界初」がPRの材料になると見越しての依頼だったのです。「世界初(※自社調べ)」という一文を時々見かけますが、信用性の面から「自社調べにはしたくない」というこだわりもあったのだそう。
ただ、世界初=これまでに「無い」ことを証明するのは非常に難しいことです。広報チームにとっても初めての経験で、同チームの畑中英里那さんらは調査会社を探し、「世界初」の検証実績があり、本件に...


