体験設計で進化するPRとブランド 情報から関係へ、ブランドの「関係性を紡ぐ」

公開日:2025年10月01日

  • 歌代 悟(博展)

情報があふれる時代、ただ発信するだけでは生活者の心に届きづらくなっている。今なぜ体験型PRが注目されるのか、その本質を整理し、実際の事例を交えながら体験設計がブランドにどのような力をもたらすのかを解説する。

コミュニケーションツールの進化により、企業はいつでも情報を発信できるようになりました。しかし、より便利で手軽に情報を届けられる一方で、情報量の増加、複雑化などにより相手に正確に伝えることは難しくなっています。

人々はあふれる情報の中から「より信頼できるもの」を選び取る傾向が強まり、情報を取得する時代から、取捨選択する時代へとシフトしています。

なぜ今、PRに「体験」が必要か

PRの目的は、単に「知ってもらう」ことではありません。共感や愛着を育み、長期的な関係を築くことに真価があります。情報過多の時代において、その実現手段として再び注目されているのが「体験」です。五感を通じて得られる実体験は、人にとって信頼できる貴重な情報となっています。

体験はブランド価値を育むうえで欠かせない要素であり、感情を動かし、記憶に深く刻まれ、行動を後押しします。つまり、体験そのものが強力な情報発信の手段となるのです。本稿では、体験型広報の価値とその設計の基本を解説します。

消費行動の変化と体験価値

2000年代以降、消費は「モノ」から「コト」へと大きくシフトしました。商品やサービスの所有より、そこから得られる体験そのものに価値が置かれるようになったのです。この傾向は特にミレニアル世代やZ世代に顕著です。

さらにSNSの普及がこの流れを加速させました。InstagramやTikTokで「映える」体験を共有する行為が新たな価値となり、個人的な感動は社会的な共感へと広がります。体験は個人消費を超え、社会とのコミュニケーションツールへと重要性を増しました。

そして今、価値観はさらに深化し、「トキ」や「イミ」といった非物質的な要素へとさらに重心が移っています。楽しい時間そのものではなく、体験が自分をどう変え、どんな意味を持ち、社会にどう貢献するかという本質が問われています。

ビジネスにおける「体験」の変革

消費行動の変化はビジネスにも大きな影響を与えています。マーケティングやブランディングで普及した「CX(カスタマーエクスペリエンス)」は、顧客が接するすべてのタッチポイントを包括的に捉え、その価値を最適化する考え方です。

例えばAmazonは一貫した購入体験を徹底し、ストレスのない取引でロイヤルティを高めています。スターバックスは「第三の場所」として、コーヒー販売にとどまらず空間やサービス全体をデザインし、差別化とブランド価値向上を実現しました。

BtoBでも同様に、SaaS企業は導入支援や継続サポートまで含めて顧客体験を設計しています...

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この記事が含まれる特集

企業価値を伝えるブランド体験設計

Z世代・α世代を中心にSNSが情報収集のメインツールとなった現代ですが、SNSを通じて自社のことを知ってもらえても、それだけですべてが伝わっているとは限りません。だからこそ、実際に見て・触れて・体験するリアルな体験を届ける場づくりが大切になってきています。商品やサービスだけでなく、企業の思いやビジョン、社会的な存在意義を体感してもらう。こうしたブランド体験を通じて、将来の顧客・社員・協業先といった多様なステークホルダーとの信頼関係の土台を築いていく。それは、企業価値の持続的な浸透と対話を担う広報の領域です。本特集では、企業がどのようにブランド体験を設計し、広報活動として社会との対話につなげているのかを探ります。ミュージアムやイベントなど、生活者と企業が出会う「リアルな場」から始まるブランドの伝え方を、最新事例で紐解きます。

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