太平洋セメントは、能動的な広報活動へと舵を切り、「当社らしくない」挑戦に踏み出し、従業員エンゲージメントの向上につなげた。同社総務部広報グループに、CM制作の背景などを聞いた。
太平洋セメントが企業ブランドCMという大きな施策に踏み切るまでには、一定の準備期間があった。出発点は、広報施策そのものではなく、「そもそも広報戦略とは何か」を問い直したところだ。
若手の意見を集約
「これまで当社には、広報戦略と呼べるものが明確に存在していなかったと思います。社内報の制作や、取材の対応窓口といった、いわば『受け身』の役割にとどまっていました」と振り返るのは、同社総務部 広報グループ リーダーの森山千秋氏。BtoB企業である同社において、広報活動は長らく「直接的に成果が見えにくいもの」と捉えられてきた。商品を広告で売るビジネスではなく、セメントという基礎素材を扱う企業である以上、広報活動が事業や企業価値に与える影響が見えにくいのだ。
そのため、まず広報部門で戦略を整理し、これから何を目指すのかを言語化しようとした。しかし、その案を経営層に示した際、返ってきた反応は「広報だけで考えている印象が強い」という厳しいものだった。
「広報部門だけで正解を出そうとしても、どうしても行き詰まってしまう。会社として納得してもらうには、もっと違うアプローチが必要だと感じました」(森山氏)。そこで同社が選んだのが、若手を中心としたワーキンググループの設置だった。広報部門に限らず、人事、経理、総務など、さまざまな部署からメンバーを募り、部署横断で議論する体制をつくった。
「意識したのは、あえて『当社らしくない』やり方を取ることでした。年次や役職に関係なく意見を出し合う場に加え、若手従業員が会社に答申を出すこと自体が、当社にとっては新鮮な試みだったと思います」(森山氏)。毎週集まり、広報とは何か、自社はどう見られているのか、どう見られたいのか、どんな状態を目指すべきかを徹底的に議論。社内アンケートや外部調査も実施し、感覚論ではなく、事実に基づいて課題を整理していった。
その中で、若手を含む多くの従業員が「太平洋セメントが世の中に知られていない」と感じていたことが浮き彫りになった。「会社としては業界トップクラスの存在でも、一般の人や学生にはほとんど認知されていない。知られていないことが、採用にも、従業員の誇りや愛...
