グローバルPR市場の注目事例を紐解き、日本の広報担当者が活用できる知見と実践手法を解説します。
難民問題や人道危機のような大きな社会課題を伝えることは、広報・PRにとって簡単な仕事ではありません。
なぜなら、多くの人はその重要性を理解していても、自分との距離を感じているからです。遠い国で起きている出来事は、どうしても日常生活の優先順位の後ろに追いやられてしまいます。特にSNSやニュースアプリを通じて膨大な情報が流れ込む現在では、人々の関心を獲得するだけでなく、それを行動につなげることがますます難しくなっています。
今回紹介するのは、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)のために、イタリアのPRエージェンシーINCが企画・実施した「The Broken Recipe(壊れたレシピ)」キャンペーンです。人道支援予算の削減で、食料支援が中断されるスーダンや周辺国の難民・避難民の現実を、「途中で止まる料理動画」という日常的な体験へと翻訳したこの施策は、PRが社会課題をどのように身近なものへ変換できるのかを示した好例でした。
伝わりにくい遠くの危機
2025年当時、スーダンでは世界最大規模の人道危機が続いていました。武力衝突によって約1300万人が避難を余儀なくされ、多く...

