広陵高校の騒動から紐解くSNS炎上 デジタル時代に求められるリスクマネジメント

公開日:2025年12月01日

  • 福田浩至(ループス・コミュニケーションズ)

今年騒動となった広陵高校における部内暴力問題はセンセーショナルな事件だった。舞台は学校や寮という特殊な環境だったが、SNSの炎上という点では他人事ではない。騒動の経緯を振り返りながら、企業の炎上対策への教訓としたい。

2025年8月10日、広陵高校が全国高等学校野球選手権大会(甲子園)の出場を辞退した。開催期間中、すでに第1回戦を勝ち上がり、第2回戦の対戦相手が決まった状況での辞退は、前代未聞だ。発端は、1月の部内暴力事件。事件発生から8月の辞退まで、適切なタイミングでの対応を怠り続けたことが招いた結果だ。

本稿では、この事案から企業が学ぶべき危機管理とリスクマネジメントの要諦を解説する。特に、初動対応の重要性、デジタル時代のモニタリング体制、組織の本質的価値の堅持という3つの視点から分析を行う。

1 事案の経緯:後手に回り続けた7カ月間

まず、事案を時系列に辿ってみよう。図1は、Xにおける「広陵高校」を含む投稿件数の日次推移である(データはBrandwatchにより収集)。8月頃に激増している様子がよくわかる。

図1 Xにおける「広陵高校」を含む投稿件数の日次推移

出所:著者

7月までは最小限の対応のみ

1月から7月は、学校側が最小限の対応で収束を図ろうとした時期。被害者・保護者への真伨な対応を怠り、形式的な処分で幕引きを図ったことが、後の炎上の火種となった。企業でいえば、顧客クレームを軽視し、最小限のコストで処理しようとする姿勢に重なる。

内部調査の限界と信頼の崩壊

図2は、8月1日~11日までの「広陵高校」を含むX投稿件数の時間別推移を示している。報道や告発の拡散に伴い8月5日の夕方から急増していることがうかがえる。

図2 8月1日~11日までの「広陵高校」を含むX投稿件数の時間別推移

出所:著者

6日には内部調査の報告を行い、事態の幕引きを図ろうとしたが、翌7日には新たな過去の部内暴力がSNSで話題となった。学校側は再び事実否定の発表を行ったが、それだけではステークホルダーの信頼を回復することは不可能である。特に今回のように被害者が実名に近い形で告発している状況では、第三者性・透明性・被害者中心主義を欠いた対応は「隠蔽」と見なされる。企業不祥事においても、内部調査のみで幕引きを図る姿勢は炎上を加速させる典型例だ。

図3 騒動の経緯

事後対応の不透明性

甲子園辞退後も幕引きとはならず、監督・部長交代をはじめとした8月21日以降の対応が続いた。

組織改革のアクショ...

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