記者がどんな取材先を探しているのかを把握しダイレクトに情報提供できれば、効率的な広報活動が実現できる。そうしたアプローチを可能にするのが博報堂の「Espresso Hub(エスプレッソ・ハブ)」。広報担当者と記者をつなぐプラットフォームだ。
「新しい記者との接点を増やしたい」「メディアとのつながりを深めたい」。そうした課題を持つ広報担当者を支援するため、博報堂は2024年3月、取材マッチングプラットフォーム「Espresso Hub」の提供を開始した。
広報担当者はプラットフォーム上で、記者・メディア制作者がどんなテーマに関心を持っているのかを確認しながら、個別にメッセージを送ることができる。「Espresso Hub」を通じて築いた記者との関係が、パブリシティの獲得へと結びついている。
図 「Espresso Hub」の画面イメージ

リアルな取材ニーズを知る
このプラットフォームには、①「取材テーマを探す」②「記者を探す」の大きく2つの機能がある。
①「取材テーマを探す」では、記者が取材先を募集しているテーマを閲覧・検索できる。例えば「生成AIの活用事例を探している」「ベンチャー企業の社長を特集する」など、記者からプラットフォームに投稿があると、広報担当者にメールで通知も届く。詳細に記者が求めている情報を把握できるため、自社の広報戦略に沿うテーマが見つかれば、確度高く記者へ情報提供をすることが可能となる。
記者ごとの関心領域をチェック
②「記者を探す」では、プラットフォームに登録されている記者名や媒体名、プロフィール、専門領域を閲覧でき、各記者の主な取材テーマがタグ付けされている。匿名での登録(媒体名は公開するが記者名はイニシャルなど)も一部あるが、すべての記者に直接メッセージを送ることが可能だ。
メディア側の登録は、テレビ局の報道・制作担当者、テレビ制作会社、放送作家、新聞・通信社の記者、雑誌・ウェブの編集者・ライターなど数百名規模。記者のデータベースを閲覧できる仕組みは、国内の取材マッチングプラットフォームの中でも珍しい。「博報堂グループが長年育んできたネットワークを駆使しメディアに登録いただいています」とEspresso Hub事業責任者の北川佳孝氏は話す。
メディアの動向をつかむ
「Espresso Hub」の公開から1年半。どのような使い方がメディア露出へとつながっているのか。「メディアの方々が口をそろえておっしゃるのは『事前に自分たちのメディアについて調べてくれている人とそうでない人はすぐに分かる。熱意ある方には話を聞いてみたい』ということ。記者にとって有意義な情報は何かをつかんだ上での丁寧なアプローチがメディア露出につながりやすいことが明らかになっています」と北川氏は振り返る。
昨今は「働き方」「ESG/SDGs」「テクノロジー」など企業価値向上につながるテーマを追う記者の登録も多い。「広報戦略の変化に応じて『これまで接点のなかったESG関連の取材が多い記者にアプローチしたい』など、出会いたいメディアも変わってくると思います。『Espresso Hub』を使って、どの記者がどのような関心を持っているかを眺めるだけでも、十分にメディア動向が把握できます」(北川氏)。
対面交流やスキルアップ機会も
「Espresso Hub」の利用企業は、記者が登壇するトークセッション&名刺交換会にも参加できる。隔月で開催するトークセッションでは、「女性活躍」「AI/テクノロジー」など、毎回異なる旬なテーマを設定し、記者の生の声を聞ける場を提供してきた。
10月からは、こうした記者との対話機会に加え、広報スキル向上の研修や、他社の広報担当者との横のつながりがつくれるサロンをスタートする予定だ。

博報堂
PR局 PR-X部 戦略CD/
Espresso Hub事業責任者
北川佳孝氏
利用企業の声

登録をきっかけにテレビ取材などが相次ぐ
「働きたい」をトータルでサポートする活動を関西の阪神エリアを中心に展開しています。働きたい主婦と人材を求める企業のマッチングや、キャリア相談、勉強会の開催、多様な働き方の推進などを通じて、企業成長のお手伝いをしたいと思っています。私たちの広報課題は、企業側への情報発信力の強化でした。そんな中、紹介されたのが「Espresso Hub」。試しに登録してみたのが始まりでした。ちょうどその頃、当社では「短時間正社員」という制度を導入したタイミング。多様な「働き方」が社会的テーマとして注目される中で、制度の情報が「Espresso Hub」を通じて某全国ネットのテレビ局の方に届き、取材の依頼を受けて放送に至りました。テレビの影響力は大きく、様々な企業からお問い合わせがありました。放送後は他のテレビ局をはじめ複数のメディアにも取り上げていただきました。

ママントレ
代表取締役
須澤美佳氏
記者とのリアルな交流機会を活用、視点をインプット
クラシエは「いち髪」「ナイーブ」などを展開するトイレタリー事業や「葛根湯」などの漢方薬を中心とした薬品事業、「ねるねるねるね」「ヨーロピアンシュガーコーン」といった食品事業を展開しています。私たちコーポレートコミュニケーション部が日々心がけているのは、常にメディアの方々の声に耳を傾けて社会の関心事項として必要とされる情報を収集し、クラシエの事業領域で提供できる事案があるかを模索することです。「Espresso Hub」では2カ月に1回ほどメディアの方々が登壇するイベントが開催され、現場記者の“今”の考えを生の声として聞ける機会があるので積極的に参加しています。常に新しいメディアの方々と出会い、最新の視点や課題感をインプットすることで私たちもアップデートし続けながら、より良い提案がメディアに対してできるようになりたいと考えています。


クラシエ
経営企画室
コーポレート
コミュニケーション部
小長谷 理絵氏
島倉菜月氏
「取材テーマを探す」がBtoB広報のヒントに
アルコニックスグループは「夢みた未来を描く」を掲げ、「卸売・流通」機能を担う商社流通セグメントと、「加工・製造」機能を担う製造セグメントからなる、アルミや銅、レアアースなどのモノづくりに欠かせない非鉄金属をワンストップで提供する「総合ソリューションプロバイダー」企業です。BtoB企業としての側面が強く、生活者との直接的な接点が少ないため、広報活動による企業情報の発信は企業ブランディングの観点から非常に重要だと捉えています。当社は「Espresso Hub」の利用を始めたばかりですが、定期的に取材先の募集があるため「取材テーマを探す」を見てメディア視点を把握しています。当グループを構成する国内外61社の広報情報を総動員してメディアにアプローチすることで、グループ全体のブランディングに貢献できると思い活用を開始しました。

アルコニックス
IR広報部
志波日月氏

お問い合わせ
株式会社博報堂
〒107-6322 東京都港区赤坂5-3-1 赤坂Bizタワー
https://espresso-hub.info/lp/company
サポートセンター:0120-899-089(平日 9:30-17:00)
Mail:espresso-hub@hakuhodo.co.jp