MVVの浸透に向けた研修は多くの企業が繰り返し行っているにもかかわらず、社員との距離感が縮まらない─そんな課題に対し、LITORYは音楽とNLPを活用したコーチングを組み合わせた独自のワークショップで応えている。
LITORY 代表取締役 平田圭氏(中央)、アカウントプランナー 石川紗織氏(左)、アカウントエグゼクティブ 前田紗里氏(右)
MVVの“暗記”から脱却
音楽を活用したブランディングを事業のひとつとするLITORY。企業のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)をもとに曲を生み出し、深い理念浸透を図る「VISION SONG」を注力サービスとして展開している。同社の平田圭氏は、IT業界でBtoB営業・マーケティングを経験した後、音楽に関する仕事をしたいとの想いから2020年に同社を設立。アーティストマネジメントやライブ配信などを手がける中で、自身の強みであるBtoB領域と音楽を結びつける発想にたどり着いた。
転機となったのが、五感を活用するNLPコーチングとの出会いだ。「音楽は聴覚に強く作用し、記憶にも感情にも残る。企業のMVVを実現するためのコーチングに、音楽を掛け合わせられるのではないかと考えました」(平田氏)。従来のMVV浸透施策の典型は全社集会やMVVブック・カードの配布、社内報などの“暗記型”だったが、それらとは異なる新たな試みだ。
当初、同社が構想していたのは現代版の“社歌”。しかし、社歌という言葉には「古い」「ダサい」「歌わされる」といった印象が伴う上に、企業全体を巻き込んだプロジェクトとなるので予算も高くなる。そこで同社は、全社一律ではなく、部署やチーム単位で取り組める「VISION SONG SESSION」へと発想を転換。気軽に取り組むことができる点もメリットとした。
図 VISION SONG SESSIONの全体設計
実際のワークショップの様子。1日目は「好きなアーティストは?」など、誰もが楽しみながら回答できるテーマから議論が始まり、最後は自分たちで楽曲を制作。約1カ月後の2日目では、これまでの行動を振り返りMVVをもとに自分だけの創作ストーリーをつくることで、さらなるMVVの浸透を図る。その後もメルマガなどを通じたフォローアップを実施。
MVVを自分たちの言葉に
ワークショップは2日間構成。1日目の前半では、NLPを活用したコーチングに基づく約2時間半のセッションを行う。参加者は自身の経験や価値観を書き出し、チームでシェア。いきなり議論からではなく、まず自分の言葉で整理してもらうことで自然な自己開示を促し、MVVと自分の過去・現在・未来の経験を重ね合わせる。これにより「会社が言っていることは、自分を後押ししてくれる言葉だ」という感覚を醸成する。平田氏はこの変化を「セルフイメージを、会社のビジョンの言葉を使って向上させる」と表現する。
続く1日目の後半では、AI音楽生成ツールを用いてチームごとに楽曲を制作する。参加者が書き出したキーワードを歌詞候補として整理し、“MVVを実現した未来を描いたときに感じる感覚”をもとに曲調を決定。R&BやROCK、アイドル風など、チームの雰囲気に合わせた今風の曲調で制作可能だ。1曲あたりの生成時間は約2分。2時間で30~40曲を試しながら、チームが最も納得できる1曲を選んでいく。最終的に完成した曲は、参加者自身が書いた言葉を歌詞に含んだ、そのチームだけのものだ。平田氏はそこに、従来の社歌や一方的なビジョン訴求との違いがあるという。「自分たちの言葉で曲ができているので、強制されていない。だからこそ、各人が納得できるものになります」(平田氏)。
その後の行動変容を促す
1日目の最後に参加者は「この1カ月間、何を意識して行動するか」を、完成した楽曲を流しながら宣言。この期間が、日々の職場での意識変化を促す時間となる。そして約1カ月後に実施する2日目の冒頭で、宣言した行動を振り返る。楽曲作成で完結するのではなく、その後の行動変容を促す点が「VISION SONG」の大きな強みだ。
ワークショップ後のクライアントへのヒアリングでは、「いまだに、ランチの時間にワークショップの話が出てくる」という声が。インプット型の研修とは異なり、共同で何かをつくり上げた体験が、その後の社員同士のコミュニケーションにも影響を与えている。その他の導入企業からも「MVVについて、ここまで向き合って考えたことがなかった」「自社のMVVを具体的に判断軸として使っていきたい」といった反応が寄せられている。
さらに2日目以降も、月1回配信のメールマガジンでNLPのノウハウや考え方を発信し、継続的な接点を維持。今後はオンライン勉強会やクローズドイベントを組み合わせたコミュニティへの発展も計画中だという。
MVVは“今”を豊かにする
平田氏が一貫して語るのは、MVVに対する認識の転換だ。「MVVは数年後の話ではなく、今の自分の行動を後押ししてくれるもの。だからこそ、自分がMVVを体現している最初の一人という感覚を持ってもらいたいです」。
社員が企業理念を“自分のもの”として感じられるかが、組織のパフォーマンスを左右する。同社では「VISION SONG」を入り口としながら、その先の行動変容を支援するプログラムを、大企業の事業部単位から中小企業の全社規模まで展開していく方針だ。「ビジョン浸透施策は毎年やっている。でも何か足りないと感じている企業にこそ試してほしいです」(平田氏)。
利用企業の声
ヤンマーブランドアセットデザイン
全員が納得できるMVVに進化
当社では創業時にMVVを設定していましたが、1年やってみて何か違うと感じていました。その時に出会ったのがLITORYさんの「VISIONSONG」。普段から使い慣れているはずのMVVであっても、改めてメンバーとその言葉の意味を分解し、それぞれの目線で考えてみると、言葉が立体的に意味づけされ、そこから抽出された言葉を紡ぎ直すと、全員がしっくりくるMVVに生まれ変わりました。魔法のようなプログラムでしたね(笑)。
HENNGE
浸透している理念をチームで語れる言葉へ
全社的な行動指針であるHENNGE WAYは社内に深く浸透している一方で、メンバー同士が「どの価値観に共感しているのか」を改めて語り合う機会は多くありませんでした。東京・大阪に拠点が分かれるマーケティングセクションで実施すると、歌詞や曲調を考える過程で、普段は表に出にくい個人の想いが自然に共有されました。実施後にはHENNGE WAYの言葉が日常会話に出るようになり、自発的なコミュニケーションのきっかけにもなっています。
YUIDEA
多様な原体験と音楽が理念を「自分ゴト」に
当社も企業のPMV浸透を支援する立場でもあるのですが、音楽を用いたアプローチは大変新鮮でした。日常業務を離れ、個人の原体験を音楽やストーリーに昇華させる過程で「PMVが自分の支えになることが分かった」「自分の目標と会社のPMVが同じ方向を向いていたから、この会社に入ったのだと確認できた」といった声が寄せられました。会社の言葉を、自分の人生や日々の仕事に役立つ言葉として捉え直す機会になりました。
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