危機管理広報は“掛け捨て保険”ではない! “成長投資”に変わる「レジリエント広報」

公開日:2025年12月02日

  • 高場正能(高場経営広報舎 代表)

危機管理広報は「有事の際に役立つもの」。裏を返せば、有事にならなければ意味がない、いわば “掛け捨て保険” のような扱われ方をしてしまう可能性もある。約40年にわたり広報と向き合ってきた高場正能氏が、「レジリエント広報」という新たな発想を提示する。

『広報会議』1月号で毎年「危機管理広報」が特集されるのを見て、「今年こそやらねば……」と思う広報パーソンは少なくないでしょう。しかし、実際に準備に着手するとなると、どうでしょうか。

私は危機管理の専門家ではなく、広報の育成支援を本分としていますが、広報として二度三度と危機を経験した実体験から、「企業の内側からの目線」「経営者に近い立場からの目線」「有事が起きていない平時からの目線」で危機管理広報を語る機会が多くあります。

その際の率直な印象も、「大事だと考えているが、導入は “後回し”」。一体なぜでしょうか?

『広報会議』では2015年から恒例企画として毎年1月号に「危機管理広報」特集を刊行している。

後回しになる本当の理由

「目の前のタスクが山積みで手が回らない」「専門人材がいない」といった現実的な理由はありますが、その “根っこ” には、大きな誤解が横たわっていると私は感じています。

それは、「危機管理広報は、無意識のうちに “掛け捨て保険” のように捉えられている」という仮説です。.

この無意識の判断は、具体的に以下の実態に表れます。

① 「コスト」:いつ来るか分からない危機への備えにかかるコストやフィーは、目に見える成果に直結しないため、削減対象となりやすい。

② 「時間と労力」:マニュアル作成やシミュレーションに投じる時間と労力は、今日の売上や広報成果に繋がらないため、平時のタスクの後回しにされる。

③ 「効果」:危機が発生しない限り、準備したことによる導入効果はゼロであり、結果として投資対効果が極めて見えにくい。

④ 「意識」:準備が整った時点で「これで安心」と意識が終了し、継続的なアップデートや組織への浸透を怠りがちになる。

まさに “掛け捨て保険” と同じ構造です。

広報の基盤強化になる

しかし私は、そうではないと言い切ることができます。それはなぜか。

危機管理広報の準備には、平時の広報を強化するエッセンスがたくさん含まれているからです。準備段階で平時からできることが沢山あって、これらに着手することは、ぐるりと回って平時の広報の基盤強化になることばかりです。そして、危機管理広報は一過性のものではなく、必ず「次につながる」「成長しながらつながっていく」ものだと考えているからです。

有事から平時に繋げる広報力

私は、拙著『広報で一番大切なこと』(日本実業出版社)において、危機管理広報「平時にやるべき7つの準備」(図1)という提示をしています。その際に、例えば想定問答...

この先の内容は...

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危機を乗り越える広報対応

2025年は、サイバー攻撃や学校現場でのトラブル、転売をめぐる混乱、生成AIによる誤情報など、危機の種類だけでなく広がり方も複雑さを増した一年でした。問題そのものよりも、「状況をどう整理し、どのように向き合おうとしているのか」が可視化され、その姿勢が企業評価に直結する場面が増えています。こうした環境下で、危機を乗り越えるためには、発生した出来事の背景や影響範囲を的確に捉え、取引先・顧客・生活者といった多様なステークホルダーの視点を踏まえて対応の筋道を示すことが欠かせません。他社で起きた問題であっても、自社の方針や価値観が問われるケースが増えるなど、広報の判断領域はこれまで以上に広がっています。本特集では、2025年の事例に関する調査や専門家の寄稿をもとに、組織が混乱を最小限に抑え、信頼低下やブランド棄損を防ぐための広報対応を整理します。危機に直面した際、何を基準に判断し、どのように説明するのか。「乗り越えるための広報」の視点を、多角的に探ります。

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