発信量の増大と炎上リスクの高まりにより、広報現場の負荷は限界に近づいている。朝日新聞社の文章校正AI「Typoless」はこの構造的課題をどう変えるのか。同社の福原裕人氏に、広報組織の転換点を聞いた。
朝日新聞社
メディア事業本部
ビジネスソリューション部 部長
福原裕人氏
発信環境の変化は、広報の仕事の前提を大きく変えた。かつてプレスリリース中心だった発信は、SNSやオウンドメディアの普及により多様化し、扱う情報量は飛躍的に増えている。その結果、広報部門が担うチェック業務も増大し、炎上リスクも高まっている。朝日新聞社 メディア事業本部 ビジネスソリューション部 部長の福原裕人氏は「発信量の増加は、確認工数とリスクの増大に直結しています」と指摘する。
企業ブランドへの影響も
特に難易度を上げているのが、言葉に関するリスクだ。ジェンダーや差別表現への配慮は年々厳格化し、かつては問題とされなかった言い回しが、現在では炎上の引き金になり得る。それはSNSで瞬時に拡散され、企業ブランドに深刻な影響を与えかねない。「信頼は積み上げるのに時間がかかる一方で、崩れるのは一瞬です」(福原氏)。
一方で、対応は依然として属人的なものにとどまっている。最終チェックはベテランの目視と経験に委ねられ、判断基準は共有されにくい。その結果、担当者や世代によって判断にばらつきが生じる。「表現に対するリスク感度の『個人差』が、組織として担保すべき品質の一貫性を損なっています」(福原氏)。
生成AIには懸念も
また、「責任を強く感じる担当者ほど負荷が高まる」構造にも課題がある。ミスを避けようとするほどチェック工程は増え、確認作業に時間を取られる。その結果、本来注力すべき業務に手が回らなくなる。
生成AIによるチェックも進むが、福原氏は「『最後の砦』にはなり得ない」と語る。広報業務では未発表情報を扱う以上、セキュリティ面の懸念があり、差別的ニュアンスや業界特有の不適切表現を見逃す可能性もある。ハルシネーションのリスクも含め、最終的な品質保証には限界があるのだ。
判断基準を明示
そこで注目されるのが文章校正AI「Typoless」だ。同サービスは、朝日新聞社が長年の新聞制作で蓄積してきた記事校正履歴データをAIが学習。さらに、新聞社の約10万個の校正ルールを収めた「ルール辞書」も搭載する。
また、単なる指摘にとどまらず、「なぜ不適切か」「どう直すべきか」を根拠とともに示す点も特徴だ。「単なる推論ではなく、明文化された判断基準を示せることが、生成AIとの決定的な違いです」(福原氏)。
入力データは保存・学習されず、機密文書にも対応。WordやExcel、PDF、PowerPointのままチェックでき、業務フローを変えずに導入できる。
チーム全体のスキルを底上げ
さらに重要なのは、個人依存の品質管理を組織の基準へ転換できる点だ。指摘理由を通じてリスク感度が養われ、若手育成にもつながる。「ベテランの知見を仕組みとして共有でき、チーム全体のスキルが底上げされます」(福原氏)。
Typolessは単なる効率化ツールではない。チェック業務を削減し、広報が本来担うべき役割にリソースを振り向ける仕組みである。特に丁寧かつ真面目に確認作業を行ってきた担当者ほど、その効果を実感しやすい。
人間の役割は「価値創造」
では、Typolessを活用することで、これからの広報組織はどう変わるのか。福原氏は「人間は人間にしかできないことに集中すべきです」と語る。メディアとの関係構築や文脈を踏まえた判断、戦略設計といった「価値創造」は人間の役割であり、誤字脱字や表記確認といった「守り」はテクノロジーに委ねることができる。「守りの自動化により、広報は『攻め』に転じることができます」(福原氏)。Typolessは、広報の生産性と品質を同時に引き上げる校正の仕組みだ。
導入企業の声
日本たばこ産業 IR 広報部 課長(広報担当) 高畑友章氏
単なる誤字脱字チェッカーでなく、文章の質を上げる指摘も
「Typoless」の採用を決定したポイントは、非常に手軽で、軽く動くという点です。校正の内容についても充実しており、単なる誤字脱字チェッカーではないと感じました。個人的にハッとさせられたのは、一文が長くなってしまった時に出る「良文サポート」機能の指摘です。我々は文を短く切って分かりやすくしているつもりなのですが、言いたいことが多いと、長文になってしまうケースも多々あります。生成AIでは、そこまで気の利いた指摘はしてくれないと思います。文章のクオリティーを上げるためのアドバイスまで表示されるのには驚きました。
校正にかかる時間は、大幅に短縮されたと感じています。気づかされたのが、書き手の癖は文章に意外にも出てしまうこと。よく読むと微妙な違和感がある表現に対して、「Typoless」を通してある程度安定したトーンの文章にすることで、一定のクオリティーを担保できるようになったと思います。
ツクイ 総務部 広報課 課長 山中秀樹氏
校正についてディスカッションできる環境へ
導入前は、大学で日本語学を専攻していた広報課員が主担当者として、新聞社の用語集や辞書などを駆使して校正していました。「Typoless」を採用したのは、当社が策定した用字用語の基準を「カスタム辞書」に登録して使うことができ、他の表記ルールについて当社の基準に近いというのが大きな理由です。用字や用語のルールが徹底されている新聞社が作ったシステムという点にも魅力を感じました。
導入後は、広報課員全員の用字用語に関する意識が高まり、メンバー間でディスカッションできる環境が整いました。これまでは1人の担当者に校正業務を属人的に任せていたのが、「Typoless」という「もう1人の校正担当者」が増えたような感覚です。他のメンバーが自分で校正できるようになった分、担当者が「用字用語の基準」をブラッシュアップしたり、表現に関して自分から提案したりする時間も増えています。
Typolessについて
安定した品質を、チーム全員で
「Typoless」は、朝日新聞社が長年の新聞制作で蓄積してきた校正履歴データを学習した文章校正AIです。誤字脱字や表記ゆれはもちろん、差別表現や不適切な言い回しまで指摘します。
自社の用字用語をカスタム辞書に登録し、会社としての判断基準をチーム全員で共有。属人的になりがちな最終チェックを、組織の基準にできます。
Word、Excel、PDF、PowerPointのまま校正でき、入力データは保存・学習されないため、機密文書にも対応。
プレスリリース、SNS、オウンドメディアなど、広報で扱うさまざまな文書をまとめて確認できます。
個人による判断のばらつきを抑え、公開前のチェックをチームで進めやすくします。
生成AIだけでは担いきれない「最後の砦」として、広報文書の品質管理をサポートします。
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お問い合わせ
株式会社朝日新聞社 メディア事業本部 ビジネスソリューション部
https://typoless.asahi.com/
〒104-8011 東京都中央区築地5-3-2

