顧客体験をコミュニケーションの鍵に NEXCO中日本の横断型ブランディング

公開日:2026年2月02日

    高速道路の建設・管理を担う中日本高速道路(NEXCO中日本)は2024年度から企業CM「ささやかな幸せのそばに」シリーズを展開している。そこで描いたのは、高速道路を利用する “人々の思い出” だった。

    中日本高速道路(NEXCO中日本)は、創立20周年を迎えた2025年10月1日、高速道路を舞台にした企業CM「ささやかな幸せのそばに(with a little happiness)」シリーズ第4弾「思い出のサービスエリア」編の放映を開始した。このCMをはじめとした同社のコーポレートブランディング施策は、企業好感度の大幅なアップ、社内のワークエンゲージメントの向上など、大きな成果を生んでいる。

    “愛着度”獲得という課題

    施策の出発点となったのは、高速道路事業などを運営する同社が抱える、コーポレートコミュニケーションの課題だった。

    これまで同社は、安全を最優先にした上で、安心・快適な高速道路空間をいつでも提供するという理念のもと、「期待」と「信頼」の獲得をコミュニケーションの目標としてきた。そのため、放送してきたテレビCMは、顧客の快適性・利便性を図る取り組みを伝え、「高速道路が日々の生活の豊かさを支えている」と表現することを主眼としていた。

    同社 広報部 広報課 課長代理の山口健吾氏は次のように語る。「これによって、当社の事業についてお客さまにご理解いただくことができました。ですがその一方で、お客さまの当社に対する『愛着』にはなかなか結びつきづらかったというのが実情でした」。

    「愛着度」獲得の難しさは、高速道路事業の特徴にも起因する。鉄道や航空などに比べて社員や関係者と顧客との接点がなかなか無いということだ。近年は、ETCやキャッシュレス決済の普及で、利便性が大きく向上した一方、顧客との交流は減少傾向といえる。「お客さまの当社に抱くイメージを分析し、高速道路=コンクリート・無機質・冷たい、高速道路事業=堅い企業・近寄りがたいといった仮説を立てました」(山口氏)。

    図 施策の展開

    鳥の眼から虫の眼への戦略転換

    上記の課題を踏まえ、同社は従来の安全を最優先にするという理...

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