「従来のやり方を覆す」クリエイティビティ 熱量とリアリティから生まれる判断軸

公開日:2026年1月30日

  • 佐藤達郎氏(多摩美術大学教)

広報におけるクリエイティビティとは、表現の巧みさを指す言葉なのか。それとも、戦略や判断の力まで含んだ概念なのか。2025年6月から日本広報学会の理事長を務める佐藤達郎氏(多摩美術大学教授)に聞いた。

※本稿の内容は佐藤氏個人によるものであり、日本広報学会の見解を示すものではありません。

クリエイティビティは表現以外も

─そもそも「クリエイティブ」とはどう定義されるのでしょうか。

まず前提として、英語の「クリエイティブ」という言葉は、もともとは「表現」を指す言葉でした。広告代理店のクリエイティブ部門の人たちも名詞として「クリエイティブ」と言いますし、コピーやビジュアルといった表現そのもの、あるいはそれを生み出す人たちを指してきた経緯があります。

ただ、2011年にカンヌライオンズが名称を「国際広告祭」から「国際クリエイティビティ・フェスティバル」に変えた背景には、表現だけを評価する場ではない、という問題意識がありました。実際、その後のカンヌでは、広告表現とは直接関係しない領域を評価する部門が増えています。

象徴的なのが、「クリエイティブ・ビジネス・トランスフォーメーション」部門です。ここでは、コピーやビジュアルではなく、ビジネスモデルや事業構造そのものをどう変えたかが評価の対象になる。従来の広告観とは、明らかに違う軸が持ち込まれています。例えば、廃棄されていたパイナップルの葉から繊維をつくり、新たな収益源にした事例などは、従来の意味での広告表現ではありません。それでも高く評価されている。そこから見えてくるのは、クリエイティビティが表現に限定されない概念になってきているということです。

カンヌライオンズ2022の「クリエイティブ・ビジネス・トランスフォーメーション」部門でグランプリを獲得した事例
出所/カンヌライオンズ日本公式サイト

日本でも、『座って働ける価値観を普及することが、アルバイトにおける働き方改革の一環になる』との取り組みが2024年のPRアワードでグランプリを受賞した。

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これからの時代の広報×クリエイティビティ

生成AIの進化や業務の効率化が進む中で、広報の仕事を取り巻く環境は大きく変化しています。発信手段やコミュニケーションの「出口」は、プレスリリースやメディア対応にとどまらず、企業広告、オウンドメディア、SNS、統合報告書などへと広がり、広報が向き合う相手や文脈も一層多様化しています。こうした状況の中で、広報に求められているのは、単に情報を正確に届けることではありません。「誰に、何を、どのように伝えれば、人の心が動くのか」という発信のその先にある受け取り方や行動の変化までを見据えた、コミュニケーション全体の設計力が問われるようになっています。そこで改めて焦点を当てたのが、広報における「クリエイティビティ」です。クリエイティビティという言葉は、ビジュアルやコピーといった成果物を想起させがちですが、実際にはその手前にある、課題の捉え方や戦略の組み立て、社内外との関係性の築き方といった思考や判断のプロセスにこそ、重要な役割を果たしています。本特集では、研究者やクリエイターへのインタビュー、企業や自治体の実践事例を通じて、成果物の背後にあるコミュニケーション設計の思想を読み解きます。AI時代だからこそ、広報パーソンが改めて向き合うべき「人」と「コミュニケーションの本質」を見つめ直すことが求められています。

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