広報におけるクリエイティビティとは、表現の巧みさを指す言葉なのか。それとも、戦略や判断の力まで含んだ概念なのか。2025年6月から日本広報学会の理事長を務める佐藤達郎氏(多摩美術大学教授)に聞いた。
※本稿の内容は佐藤氏個人によるものであり、日本広報学会の見解を示すものではありません。
クリエイティビティは表現以外も
─そもそも「クリエイティブ」とはどう定義されるのでしょうか。
まず前提として、英語の「クリエイティブ」という言葉は、もともとは「表現」を指す言葉でした。広告代理店のクリエイティブ部門の人たちも名詞として「クリエイティブ」と言いますし、コピーやビジュアルといった表現そのもの、あるいはそれを生み出す人たちを指してきた経緯があります。
ただ、2011年にカンヌライオンズが名称を「国際広告祭」から「国際クリエイティビティ・フェスティバル」に変えた背景には、表現だけを評価する場ではない、という問題意識がありました。実際、その後のカンヌでは、広告表現とは直接関係しない領域を評価する部門が増えています。
象徴的なのが、「クリエイティブ・ビジネス・トランスフォーメーション」部門です。ここでは、コピーやビジュアルではなく、ビジネスモデルや事業構造そのものをどう変えたかが評価の対象になる。従来の広告観とは、明らかに違う軸が持ち込まれています。例えば、廃棄されていたパイナップルの葉から繊維をつくり、新たな収益源にした事例などは、従来の意味での広告表現ではありません。それでも高く評価されている。そこから見えてくるのは、クリエイティビティが表現に限定されない概念になってきているということです。
カンヌライオンズ2022の「クリエイティブ・ビジネス・トランスフォーメーション」部門でグランプリを獲得した事例
出所/カンヌライオンズ日本公式サイト
日本でも、『座って働ける価値観を普及することが、アルバイトにおける働き方改革の一環になる』との取り組みが2024年のPRアワードでグランプリを受賞した。
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