イマジネーションが対応の力に 石川県 災害広報の設計思想

公開日:2026年2月02日

    能登半島地震で石川県が直面したのは、情報が人命や行動に直結する現実だった。72時間の初動対応から、応援消費による行動変容、知見を次に残す取り組みまで。災害広報の判断プロセスをひもとく。

    発災直後の広報対応において、石川県が最初に据えた判断軸は「72時間」という時間認識だった。大規模災害では、この初動の時間帯が人命救助にとって最も重要な時間帯とされる。この時間内に、行政として何を優先し、どのような情報を出すのか。その設計が、その後の対応全体を左右する。石川県の災害広報も、この時間軸を前提に組み立てられていた。

    広報活動が人命救助に

    広報が人命救助にどう関わるのかは、直感的には分かりにくい。しかし実務の現場では、広報が発信する情報が直接、人命に結びつく場面がある。典型的なのが安否不明者情報だ。各市町から集約された安否不明者情報を県が公表することで、携帯電話の通信事業者が法令に基づき契約者情報を確認し、最後に確認された位置情報を警察や消防に提供できる。「そのため、広報が発信する情報が、人命を左右するのです」と話すのは、石川県の戦略広報監を務める中塚健也氏。NTTでの広報業務や、内閣広報室に在籍し東日本大震災発生時の対応にも携わってきた人物だ。

    能登半島地震は2024年1月1日の夕方に発生した。発災直後は被害の全体像がすぐに把握できるわけではなく、断片的な情報が徐々に集まってくる。その中でまず重視されたのは、被災状況を正確に整理し、主に報道機関を通じて社会に伝えることだった。何が起きているのかを正しく共有することが、その後の支援や行動につながるという認識があった。

    時間の経過とともに、広報が扱う情報の性質は段階的に変わっていく。被害状況が一定程度明らかになると、次に必要になるのは支援物資や...

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