味の素の統合報告書である「ASVレポート」は、単なる情報開示にとどまらず、投資家との対話を起点に設計されてきた。ASV(Ajinomoto Group Creating Shared Value)を軸に「どうすれば伝わるか」を問い続けた制作プロセスの工夫を聞いた。
味の素の統合報告書は、当初、一般的な名称である「統合報告書」として発行されてきた。しかし2022年に、社内で「もっと味の素らしさを出したい」という声をきっかけに、議論がスタートした。
読者へのヒアリングを実施
同社の経営の根本には「ASV」、すなわち事業を通じて社会価値と経済価値を共創する、という考え方がある。ASVは、「CSV」(Creating Shared Value:共有価値の創造)に由来する言葉。企業が自社の売上や利益を追求するだけでなく、自社の事業を通じて社会が抱える課題や問題に取り組むことで社会的価値を創造し、その結果、経済的な価値も創造されることを意味する。同社が「ASV」を初めて表明したのは、2014年の「2014-2016 中期経営計画」でのことだった。コーポレート本部 IR室 レポーティンググループマネージャーの岡田佐保氏は、「統合報告書でもASVを前面に出すことで、オリジナリティが出るのではないかと考えました」と話す。
同社では毎年、報告書発行後に統合報告書の読者からフィードバックをもらう会を開催している。そこでの意見を集約して、次の年の施策につなげるのが目的だ。IR活動とは別にステークホルダーに時間を作ってもらい、レポートだけについて意見をもらうもので、機関投資家だけではなく、ファンドに投資している個人投資家も対象としている。...

