「経営のための広報」が求められる一方で、実際にどのようなKPI策定や効果測定を行えばよいか悩む広報担当者は多い。今まで数々の企業で広報活動を経験してきたAdobeの鈴木正義氏に、これからの広報に必要な視点を聞いた。
広報のゴールはどこにあるのか
─近年、経営戦略の一部としての広報の重要性が強調されていますが、現状をどうご覧になっていますか。
経営的な機能として広報を考えた時、外部のパーセプション(認知)を変化させることが大きな目標になると思っています。例えば、「自分たちは電気自動車の生産・開発のリーディング・カンパニーだ」ということ自体は広告で発信できますが、その先にある“外部がそれに同意してくれる状況”をつくり出すことが、広報の経営的なミッションです。それを達成するためには、やはり露出は必要になってきます。
その上で、KPI設定や効果測定における数字は、「そのゴールに正しく向かっているかをチェックするための指標」であることが望ましいです。
ただ、そうなるとリリースの本数など、数字の話ばかりになりがちです。今はPV数やECサイトのコンバージョン率といったデジタルマーケティングが主流なので、社内でも「広報は数字で成果を出す部門だ」といった空気感が醸成される傾向にあります。一方で、広報の最終的なゴールは“自分ではない誰かの気持ちを変化させる”という定性的なことです。そのため、定量と定性の間で悩んでいる広報担当者が多いのが現状だと考えています。


