新聞や雑誌などのメディアに頻出する企業や商品リリースについて、PRコンサルタントの井上岳久が配信元企業に直接取材。背景にある広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウを、じっくり分析・解説します。
シンプルなフォーマットの
省エネリリースも、ポイントに
注力すれば大きな効果を発揮
カシオ計算機といえば、時計や電卓などの精巧なデジタル機器を思い浮かべる人も多いと思いますが、2024年に「Moflin(以下、モフリン)」というかわいらしいAIペットロボットを開発し、話題を呼んでいます。今回は、この商品を取り上げます。
本商品は今から10年ほど前、2人の開発担当者が別々に研究していたアイデアに端を発します。1人は「自分を癒してくれる相棒のような存在をつくりたい」、もう1人は「小動物の愛らしさをメカトロニクスで表現したい」と考えていました。2017年頃、この2つの研究が融合し、本格的な開発が始まったのです。
企業イメージからは遠く思えるAIロボットを、なぜ同社で開発研究できたのでしょうか?ブランドコミュニケーション本部広報宣伝部広報グループの長合優希さんに聞いてみると、同社には、エンジニアなどが新商品を提案するとマーケティング視点で実現の可能性を検討し、提案者がさまざまな部署とやり取りしながら試行錯誤できる仕組みがあるとのこと。
モフリンに追い風が吹いたのは2020年からのコロナ禍。疲弊した心を癒すメンタルヘルスに社会の注目が集まりました。当初はスタートアップ企業に技術・開発ライセンスを供与し、クラウドファンディングの返礼品として商品化が実現。申し込みが予想の30倍に達し、展示会などでも好評を博したことからカシオ版を開発することに。今回ご紹介するのは2024年11月に発売したカシオ版のリリースです。
400万通り以上の個性を形成
既存のペットロボットは数十万円する機種も多いが、モフリンは税込6万円弱と価格を抑えたのが特徴。モフモフとしたかわいらしさに重点を置き、飼い主の愛情表現から飼い主が好むしぐさを認識して400万...


